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トランプ大統領は米利上げからの「世界的ドル一極集中」を許容するか?=西岡純子

トランプ政権とFRBのインフレ許容度を考える

改めてトランプ政権の財政出動FRBによる政策のコンビネーションが何を意味するのか、まとめてみます。高圧経済ハイプレッシャーエコノミーと表現することができ、その下で経済並びに中央銀行は、目標よりも高いインフレ率を許容することになると考えられます。

1970年以降の景気拡大局面における、企業の価格設定とコストの関係をグラフで見てみます。0期を軸として、1ヶ月、2ヶ月と進むにつれて、物価に代わるデフレーターの指標がどのように変化するのかを表しています。今回のパスは2009年の第2四半期をボトムとして、デフレーターの推移を描いた線ですが、随分と下がっていることがわかります。1975年から85年の間のデフレーターは、景気が底入れをしてから随分とハイペースで上がってきました。それはインフレだからです。これによりレーガン大統領のスタートは非常に難しかったという時代です。しかし一方、今回ほど低すぎるのもどうかと思います。

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また、単位当たりの生産コスト、つまり、付加価値を1単位生み出すのに、労働コストや変動費など、どれだけのコストがかかるかを表したグラフを見ると、ようやく少し回復してきた兆しが見られます。ただ、これまでの低迷ぶりを取り戻すまでの回復には全く至っていません。リーマン・ショック前の景気サイクルと比較すると、当初は似たような動きでしたが、その数字を下回るような動きとなっています。

グローバルサプライチェーンの構築後の展開だと思いますが、ただでさえアメリカはこのように、デフレーターにしても物を作るうえでのコストにしても、非常に物価上昇率を抑制するような価格設定行動が企業によって実施されました。多少の財政出動による物価の上昇について、FRBは自由に許容することができるだろうと考えています。

もちろんインフレ率があまりにも加速度的に上がってしまうと、FRBとしては黙って見ていることはできません。例えば、現在の自然利子率がだいたい0%近辺と考えられるところ、実質金利がどんどん下がりすぎてしまい、金融環境として緩和的すぎてやり過ぎだということになれば、金融政策の引き締めに急いで動いてくるでしょう。しかし、上がり方次第ではありますが、常識的な物価の動き方から考えて、財政の発動による賃金上昇を起点とした物価上昇は、FRBにとってまだまだ全く自由に許容するレベルではないかと思います。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年2月15日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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