どうやってトップセールスマンにまで登りつめたのか
聞けば彼は、20代でセールスマンになったけれど、最初からたくさん売れたわけじゃなかったそうです。
営業を始めた頃はどうやって車を売っていいかがわからず、毎日ひまを持て余していたそう。店舗に入ってくるお客がいても、先に先輩スタッフが声をかけてしまうため、自分にはお客は回ってこない。
そこで彼は誰よりも早く出社して、開店前に毎日店舗の掃除をすることにしました。もちろんたった1人で。すると、開店前にやってくるお客がいたそうなのです。当然、先輩営業マンは出社前だから、彼のお客様ということになりますね。
夜もそう。閉店間際になると、帰り支度をする先輩たちを横目に、セールスの勉強をしたり、わかりやすい価格表を書いたチラシを作ったりしていました。退社時間はたいがい夜11時。でも、閉店後にやってくるお客様もいて、車が少しずつ売れるようになっていきました。
時間が空いた時は、人の多い街頭で何時間もチラシ配りもしました。そのチラシにもひと工夫。無料で使える会社の白い紙だと目立たないからと、自腹で黄色い紙を買ってきて、それに印刷して配る。
その黄色いチラシを持ってお客さんが店頭にくればすぐに自分のお客だとわかるし、他の営業マンに対しても自分のお客様だとアピールできるから、横取りされることもなくなったそうです。
一度車を買ってくれた人には、お友達の紹介をお願いして、そのお友達が車を買ってくれたら、リファーラル(謝礼金)を渡す。そして、そのお友達に、また別のお友達の紹介をお願いする。
もし、お客様が自分のメーカー以外の車が欲しいときは、わざわざライバルメーカーの営業マンにお客を紹介したりもする。そのうち、逆にライバルメーカーからもお客を紹介してもらえるようになっていきました。
こうして彼は3年目で、月に30台を売るトップセールスマンになったのです。
トップセールスマンが続ける平凡で地道な努力
僕がこの販売店に行ったとき、すぐに椅子を差し出してくれたのは彼だったし、お茶を出してくれたのも彼でした。女子事務員もいたけど、彼女がもたついている間にサッと対応。彼の動きに一切の無駄はなく、僕らとの話が終わった後はすぐに自席にもどり、新たなチラシ作りをしていました。
新たなお客が来店すると、さっと駆け寄り、すぐに担当営業マンにつなぐ。彼にはそれが自分のお客であろうがなかろうが、関係ない様子でした。
もちろん、僕が彼から車を買ったのは言うまでもありません。誰もが考える当たり前のことを、誰よりも徹底してやれば、周りは必ずあなたを認めてくれるようになるはずです。