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名古屋発、グローバル企業の草分け!ブラザー工業<6448>の株主総会に行ってみた

英国企業は高い買い物だったのか?

「ドミノ社を買収するというのに、なぜ株価が下がったのでしょう?」株主から、こんな質問が飛び出しました。

ブラザーは、2015年6月11日、英国のDomino Printing Sciences plc(以下、ドミノ社)を買収しました。

小池社長によれば、「当社の製品はどちらかというと消費者、民生用だ。(ドミノ社は)産業用ということでまったく違う分野だ。お互いの技術で協力すれば、いろいろなことができる。当社としては史上最大規模の買収になる。新たな事業ポートフォリオとして加えたい」(日経電子版2015年3月12日)というのが狙いだそうです。

東洋経済オンライン2015年3月13日の記事によれば、ドミノ社は、「2014年10月期の売上高は約3.5億ポンド(約640億円)、営業利益が約5600万ポンド(約102億円)。」とのこと。

ドミノ社の買収額は約1890億円と言われていますから、単純な投資利回りは100億円÷1900億円=5.3%
数字上の表面利回りは、微妙ですね(笑)

ただし、買収価格は単なる営業利益を基に判断できません。たとえば、良く使われる指標の1つは、EBITDA倍率。

買収金額÷EBITDA=EBITDA倍率

と計算されるものです。
EBITDAとは企業が1年間に生み出すキャッシュフローを意味しています。
簡便的には、営業利益プラス減価償却費を用いることもあります。営業利益は減価償却費を差し引いて計算しますが、減価償却費は過去の取引の影響や国による法律の違いなどの影響を受ける数値。そのため、現時点での企業の業績を測るには、その影響を除いた金額を利用することがとても大切で、その際に用いられるのがEBITDA、というわけです。

M&Aに長けている企業では、EBITDA倍率の目安を持っていて、実際の投資判断に使っていることも多いのです。おそらく、ブラザーにも、買収額を判断するための目安があるものと思います。

ブラザーはドミノ社を完全子会社化しましたから、ドミノ社の売上や利益も、連結損益計算書に合算されることになります。
グループ企業内取引は相殺されますが、ドミノ社の分だけ、売上が増加することになりますから、それだけでも効果があると考えられるかもしれません。

しかも、そもそも、事業シナジーを期待しての買収。良い買い物だったかどうかは、これからのブラザー次第と言うことになりそうです。

なお、株価が上がらない理由について、小池社長も首をかしげていました。株価と言うのは、本当に、難しいものです。

大株主に注目!

ブラザーの大株主は、ほとんどが機関投資家。
その中で、第7位にブラザーグループ従業員持株会がいます。役員も自社株を持っているようですから、株価を上昇させようというモチベーションにつながりそうですね。
気になるのは、第9位の朝日實業株式会社。いったいどんな会社なのか。インターネットで検索するレベルでは調査できませんでした。知っている人がいたらぜひ教えてください(笑)

創業一族は、もう大株主にもいないようです。100年以上の社歴のある上場企業ともなれば、当然かもしれません。
たとえば、前回(編集部注=平林亮子の晴れ時々株主総会【VOL.27(2015年8月3日号)】株式会社マツモトキヨシホールディングス)触れた、マツモトキヨシなどが、100年を超えたらどうなるのか。そんな視点で企業を見守ってみるのもいいなと思いました。
あ、でも私にも寿命がありますから、マツモトキヨシ100周年は見られるかどうかわかりませんね(笑)

『平林亮子の晴れ時々株主総会』vol.26(2015年8月17日号)より一部抜粋
※太字はマネーボイス編集部による

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