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ウォール街に投資家はもういない。彼らの関心は「最強のAI」開発だけ

AIが起こした「最初のフラッシュ・クラッシュ」の真相

前述の「AIトレーダー」が起こした最初のフラッシュ・クラッシュに話を戻しましょう。それは、2010年5月6日午後2時45分に起こりました。

わずか15分で、ダウ・ジョーンズは9%下落し、そのままクロージングベルが鳴っていたとしたら、S&P500は、当時、最大の下げ幅を記録したとして値幅変動率ランキングのトップに躍り出ていたはずです。

瞬間的にS&P500の有名企業の時価総額は何十億ドルも失われ、一部の上場企業の株式などは、わずか1セントで取引されたのです。

さぞかし、不眠のウォール街のトレーダーたちによる阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されると思いきや、その悪夢はたった10分程度しか続きませんでした。

フラッシュ・クラッシュの後、市場から流出した資金のほとんどが再び市場に戻って、大暴落した市場は一気に回復したのです。

その直後から、フラッシュ・クラッシュの原因を追究するさまざまな分析が行われました。大規模なインサイダー取引によるもの、メカニカルなトラブルによるもの…さまざまでした。

結局、真相の解明までには5年の月日が流れていったのです。

「なりすましアルゴリズム」で禁固350年へ

2015年になって、このフラッシュ・クラッシュは、ナビンダー・シン・サラオ(Navinder Singh Sarao)という30歳代のロンドン出身の先物トレーダーが「なりすましアルゴリズム」によって仕掛けた単独の犯行であることが判明したのです。

「なりすましアルゴリズム」…つまり、スプーフィング(spoofing)によって、実行する気がないにもかかわらず、大量の買いや売りを取引板に出して、価格を一定方向に誘導する手口

彼は、自宅寝室のパソコンでスプーフィングを行い、わずか数十秒で4000万ドルもの利益を上げたのです。

犯行の全貌が明らかになってから、彼は米国に送られて裁判を受けさせられました。裁判所が検察の要求をすべて受け入れれば、禁固380年という、彼が何度生まれ変わっても刑期をまっとうできないほど長い懲罰が科せられるとの憶測が流れていましたが、結果は、ほぼ満額回答で、380年より30年だけ短い禁固350年でした。

結局、サラオが不当に上げた利益の大部分は没収され、最後には保釈金の500万ドルも支払えない窮状に追い込まれてしまったのです。

Next: トレードの7割以上がボットと人工知能。もう人間は不要なのか?

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