アルゴリズム開発戦争の勝者がそのまま市場を制する…
酒田罫線がトレーダーツールによって取って代わっただけでなく、今日のような1000分の1秒を競うハイ・フリークエンシー・トレーディングの時代には、ボットやAIトレードを動かす超高速アルゴリズムの開発競争に打ち勝った者だけが勝者となるのです。
こうした超高速アルゴリズム・トレーダーたちは、過去の膨大なデータから株価の値動きを分析して、A社がB社よりも長期的に優れた投資をする可能性が高いという結論を引き出したから投資をするのではないのです。
彼らは、世界中の投資家たちが売買のときに流すデータの流入に素早く反応して、1000分の10秒かかっていた取引時間を、なんかと1000分の8秒に縮めて、他のアルゴリズム・トレーダーを出し抜くための競争をやっているに過ぎないのです。
つまり、彼らが重視している情報は、ファンダメンタルとなる株式に関する情報ではなく、他のトレーダーの株式評価に起因する市場の変動に関する情報です。
こうなると、もはや投資ではなく、高速アルゴリズムと低速アルゴリズムとの間の時間差競争であり、その狂気のフィードバックが最速アルゴリズムの次に速いアルゴリズムを次々と刺激して連鎖反応を誘発したことによってフラッシュ・クラッシュが引き起こされたのです。
市場との対話はもうない。あるのは人々の反応とそれを読み取るAIだけ
そこには、市場との対話もなければ、市場に対する信頼もありません。
こうなると、米・連邦準備制度(Fed)が嘘の経済指標を出そうが、米労働統計局が捏造した雇用統計を出そうが、それ自体が問題ではなくなって、どれだけ多くの投資家が、それを虚偽であると認識しながら受け入るかどうかが重要になってくるのです。
今や、ヘッジファンドは、ベイズ推定を使用して独自のモデルを自分で改善することができるAIに変わりつつあります。
AIトレーダーの意思決定によって実行されたトレードモデルの成功度合いに応じて、AI自身がパラメータを自動更新していくのです。
ウォール街に投資家はいなくなった
アルゴリズムの開発それ自体は、本質的に悪いことではありません。
しかし、大資本によって、超高速アルゴリズム・トレードの勝者となろうとしている者は、投資の専門家たちを雇い入れてフラッシュ・クラッシュの功罪…特に効能のほうを強調しがちです。
新たな資金の流入が乏しくなって、長い間、膠着状態に置かれている市場にフラッシュ・クラッシュを起こすことで刺激を与え、新たな資金を呼び込むことによってボラティリティーを高めることができるのは確かです。
すでに、ウォール街には、アルゴリズム競争の熱風が吹き荒れています。
ウォール街と利益相反の金融マスコミは、トレードの意思決定においてアルゴリズムを強化する大きなインセンティブが、より透明性を高めることにつながるかのように喧伝しています。
こんなことは明らかな詭弁で、それは必然的に透明性の欠如につながるのです。