最初から全国展開を考えていた
全国のJRでも使えるように、共通規格であるサイバネ規格を採用したこともSuicaの普及に貢献しました。サイバネ規格を採用したことで、現在JRグループ各社が、それぞれ発行している交通系電子マネー(Kitaca、manaca、ICOCA、SUGOCAなど)との相互利用が可能となったのです。
理論的には、北海道から九州まで全国のJRでSuicaが使えることになっています。1987年に分割民営化によってバラバラになった国鉄でしたが、Suicaによって、オールジャパン体制が整ったと言えるでしょう。
1枚の切符が全国のJRで使えるという国鉄の復活は、心ならずも分割民営化に追い込まれた旧国鉄マン(分割民営化に巻き込まれた人たち)の夢でしたが、その1つは実現したことになります。
ビューカードが普及を後押し
Suicaの普及を促したもう1つの要因は、ビューカードの独立です。
もともとJR東日本のカード事業部だったクレジットカード部門が、2009年にSuicaを側面から応援しようと独立したのが株式会社ビューカードでした。
Suicaはプリペイド型ですから常にあらかじめお金を入れておかねばなりません。これをチャージと呼びますが、現金とクレジットカードのいずれかで入金します。
クレジットカードで入金した場合は、入金額に応じてポイントが貯まります。この時、ビューカードを使ってチャージすると、他のカードの3倍にあたる1.5%のポイントが付きます。
さらにオートチャージができるのはビューカードだけで、スイカ+ビューカードの一体カードを持つとカードライフを十分に楽しめる仕組みになっています。
首都圏は世界一のICカード先進地域
Suicaのサービス開始から10年を経過した頃には、首都圏は、世界で最も進んだICカード先進地域といわれるようになっていました。
東京を中心とする首都圏ではJR東日本を中心とした鉄路が網の目のように張り巡らされ、鉄路ばかりでなく、街ナカの店でもSuicaや私鉄のPASMO、さらには楽天Edy、流通系のnanaco、WAONといったFeliCa型の電子マネーがたくさん使われていたからです。
この頃にSuicaは、月間1億件という利用件数を記録しています。しかし、ほとんどの日本人はこうしたことを知らず、重要性にも気づきませんでした。