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訪日観光客が「Suica」をベタ褒め。アップルが惚れた技術と世界統一への明るい未来=岩田昭男

外国人観光客たちがSuicaに驚いた

この新しいキャッシュレス世界の出現に目を見張ったのが外国人たちでした。日本に進出している外資系企業の支店や営業所には毎月のように本国から幹部がやってきます。

その人たちが一様にショックを受けるのが、新宿の朝夕のラッシュアワーです。何万人もの通勤客がSuicaをかざして整然と改札を通り過ぎる様子を見て目を丸くします。会社に戻ると、自動販売機にSuicaをかざしてコーヒーを飲む社員を見てまた驚くのです。

電子マネーは欧米で誕生したものですが、実際に普及・活用しているのは日本が一番でしたから、東京の様子を見て度肝を抜かれたのです。

アップルからのプロポーズ

度胆を抜かれた会社の1つがアップルでした。そのアップルが、2014年にSuicaに対してアプローチをかけてきました。

アップルはご存知のようにスティーブ・ジョブスが創業した世界一のスマートフォン・iPhoneのメーカーです。そのアップルの幹部がJR東日本に接触してきて、「次のiPhoneにスマホ決済サービスのApple Payで使える電子マネーとしてSuicaを載せたい。力を貸してくれ」と言ったのです。

載せるといっても、単にアプリの1つとして加えるのではなく、「Suicaファースト」ですべてをSuicaのためにカスタマイズするという破格の条件でした。これに対してJR東日本側は、あまりにも唐突だったので最初は戸惑いましたが、実は願ってもない申し出だったのです。

順調に会員数を増やしているSuicaでしたが、Suicaが採用しているFeliCaは非接触ICの国際標準規格ではなく、日本以外では使えないガラパゴス規格としていずれ淘汰されてしまう運命にあったのです。最終的には、国際標準規格であるNFC(タイプA/B)に変更しなければならないといわれていました。

しかし、規格を変えるのは資金面で難しく、とてもできないことでした。だからといってこのまま国内規格のFeliCaに頼っていては、ジリ貧になるだけです。そうしたときに前述したアップルからの話が転がり込んだのです。

JR東日本は真剣に検討を重ねました。外資系との共同事業はほとんど経験がありません。自信はありませんでしたが、飛躍のチャンスと捉え、アップルの申し出を受けることにしたのです。

Next: 困難だった「Apple Pay」対応への道のり。導入された革新的技術とは

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