2014年の米ロの対立に似た状況
この状況を見ると、ウクライナ内戦を機に、ロシアがクリミアを併合した際に発生した厳しい米ロの対立と類似しているのが分かる。
このとき、クリミアの併合に反発したアメリカとNATO軍は、黒海のロシア国境付近まで海軍を派遣し、近隣の海域に展開していたロシアの黒海艦隊と一触即発の状況になった。
このときは、ゴルバチョフ元書記長の第3次世界大戦の可能性を示唆する警告や、その他の著名な専門家が本格的な米ロの軍事衝突の可能性について言及していた。ネットでは、「第3次世界大戦間近」とのうわさが飛び交っていた。
こうした危険な緊張状態は、ロシアがシリア内戦に介入した2015年9月から一層強まり、アメリカ軍の高官からも戦争を辞さないとの発言も出てくるようになっていた。ロシアに対する好戦的な態度で知られ、ロシアとの軍事衝突も辞さないとする発言をしていたヒラリー・クリントンがもし大統領になっていたら、本当に米ロの戦争は起こっていたのかもしれない。
ところが、ロシアとの和解を主張するトランプが大統領になることで、少なくとも軍事衝突に発展する可能性は回避され、いまに至っている。
いまのところ、米中の対立は、2014年から15年までの米ロの対立ほど先鋭化していないものの、アメリカも中国も妥協する意思がまったくない以上、4年前から3年前の米ロと同水準の対立へと発展してもおかしくない状況だ。
偶発的な軍事衝突はあっても、戦争にならない
では、米中が激しく対立し、両国間の対話が途絶えたままの状態で、たとえば南沙諸島などで偶発的な軍事衝突が起こると、それがきっかけとなり、米中戦争に発展するというようなことが起こる可能性はあるのだろうか?
いまネットでは、そのような可能性を示唆する記事が数多く出ている。しかし、結論からいうと、そのような可能性はまずないと見たほうがよいだろう。
筆者の予想だが、11月6日に実施される中間選挙でトランプの共和党が勝利するタイミングで、トランプ政権は中国に対して妥協するのではないかと思われる。