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今期好業績のソディック<6143>が、PER5倍でも買いとは言えない理由とは?=栫井駿介

「放電加工機」などの工作機メーカーで世界トップシェアを誇るソディック<6143>。今期業績は過去最高水準にもかかわらずPER5倍と割安ですが買い時なのでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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詳しく見ないとわからない、この好業績はこれからも継続するか?

好調の要因は「中国特需」

ソディック<6143>は「放電加工機」などの工作機械メーカーで、同製品では世界トップシェアを誇るということです。

業績は、ここ最近確かに調子がいいようです。予想値ではありますが、今期の業績は売上高・営業利益ともに過去最高水準となる見通しです。それに対し、PERは5倍を切り、かなり割安な水準に見えます。

ソディック<6143>日足(SBI証券提供)

ソディック<6143>日足(SBI証券提供)

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しかし、業績の中身を見ると、手放しで割安と判断して良いとは限らないことが分かります。

好調の要因は、中国での需要が急増したことです。この会社に限らず、工作機械メーカーは中国の旺盛な需要に支えられて、ここ数年大きく業績を伸ばしています。ソディックもその波に乗っていることが分かります。

ソディックが扱う放電加工機は、機械製品などを作る前の「金型」を成形する時に活躍します。金型は通常の金属よりも硬い素材でできているため、それを加工するには特殊な技術が必要なのです。その分野において、世界初となる「NC彫り放電加工機用電源」を開発し、その強みが今でも活かされているようです。

かつて開発した技術を大事に育て、製造業では不可欠な存在になっているのは、典型的な日本製造業の特徴です。作る物がテレビからスマートフォンに変わっても、技術は変わらず活かされ、好況時には業績が大きく伸びる力を持っていることが分かります。

しかし、過去の業績を見ると、不況時には売上高が大きく減り、たびたび赤字を計上していることが分かります。設備投資は好況時には大きく盛り上がりますが、不況時には先送りにされてしまうため、需要が急激に減少するのです。これは、工作機械メーカーの宿命とも言えます。

そう考えると「中国特需」で盛り上がる現在の業績は必ずしもあてにならないことが分かるでしょう。過去10年平均EPSで見たPERは約15倍と計算されます。

成長事業が育っているとも言えない

ただし、企業はいつまでも同じことばかりしているわけではありません。新しい事業が育ってきているなら、その分野が大きく伸びることで、景気の波を超えた成長を遂げる可能性もあります。

ソディックは、放電加工機以外にも、金属3Dプリンタや景気に左右されにくい食品機械を強化しているようです。

しかし、これらも必ずしも順調とは言い切れません。金属3Dプリンタの売上は現時点でわずか8億円ということであり、成長の起爆剤とするにはあまりに遠すぎます。食品機械も、特別な技術が必要ということでなければ成長ドライバーとなることは難しいでしょう。

Next: 業績好調でも割安に放置されているには意味がある、その理由とは…

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