景気が悪くてもそれなりにやっていける社会を
現在、日本の政官財は、相変わらず「高度成長期の再来」を目指しています。「高度成長期の経済成長があれば、財政や雇用の問題もすべて解決する」と思っているのです。が、これはもう絶対に無理な話です。
高度成長期というのは、日本がまだ貧しい状態であり、大きな「伸びしろ」があったからこそ、成し遂げられたものなのです。今のように、もう十分に経済が発展し、
「国民1人当たりの外貨準備高が世界一」
「国民1人当たりの対外債務世界一」
というような、超金持ちの国になっている今では、そういう高度成長などは絶対に無理なことです。もしそういう奇跡的な経済成長ができたとすれば、他国の金をさらに巻き上げるということであり、世界的な大ブーイングが起こるはずです。
今の日本がやらなければならないのは、「高度成長期のような経済成長を目指すこと」ではなく、「景気が悪くてもそれなりにやっていける社会」をつくることなのです。欧米の社会は、かなり前からその構築をしてきています。日本だけが、景気が悪くなるとたちまち路頭に迷う国民が出てきて、自殺率も跳ね上がるというような状況なのです。これだけ、世界中から金を集めているのに、経済的に理由で家庭をもてなかったり、経済的理由で2人目の子供を諦めたり、経済的な理由で自殺する人がたくさんいるのは、世界に対して非常に恥ずかしいことなのです。
今、日本がしなくてはならないことは、日本の中に溜まりに溜まっている富を、もっときちんと社会に分配することです。この金持ちの国、日本で、「まともに働いても自分だけの稼ぎでは妻子を養えない」とか、「夫婦共働きでも、2人目の子供を産めない」というのは、世界から見たら、非常に滑稽な話です。個人の金融資産は1,800兆円以上、企業の内部留保金は、450兆円にも及んでいるのです。日本では、お金はあるところにはあるのです。
政官財の指導者の方々、本当にこのことに真剣に向き合っていただきたいものです。でないと、このままでは日本は、確実に衰退します。
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『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』(2019年1月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授。「正しい税務調査の受け方」や「最新の税金情報」なども掲載。主の著書「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)