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なぜ先進国で日本だけ?サラリーマンの給料が20年間も下がり続けるワケ=大村大次郎

日本の労働環境は未だに途上国

それともう1つ大きな要因があります。それは、日本の労働環境が実は非常に未発達だということです。日本人は、日本の社会制度は、欧米と同じくらいに整っていると思っているものです。ですが、よく調べてみると、日本の社会制度は欧米よりもかなり遅れている部分が多々あるのです。労働環境などは、その最たるものだと言えます。「サービス残業」があったり、有給休暇が取れない(取りにくい)などは、日本の労働環境ではごくごく普通のことですが、欧米ではほとんど考えられない事なのです。

欧米は、産業革命以来、200年以上「雇用問題」に向き合ってきた伝統があります。かつては激しい労働運動が起きたり、社会主義革命が起きたりもしています。だから、労働環境については、しっかりした制度をつくっているのです。労働者の権利などもしっかり保証されていますし、欧米では、労働者によるストもたびたび起きます。

日本人は、「欧米の企業は景気が悪くなったらすぐに社員を切る」というような、イメージを持っている方が多いようです。しかし、実際は、日本よりも労働者の権利はしっかり守られているのです。

たとえばドイツの法律では、大企業の経営を監査する「監査役会の人員の半分は労働者代表が占めることになっています。当然のことながら、安易な人員削減はできません。またアメリカの自動車業界ではレイオフ先任制度というものがあります。このレイオフ先任制度というのは、もし経営が悪くなって、人員削減をしなければならなくなったときには、雇用年数が浅い人から順に解雇する、というものです。だから、長く働いていた人ほど、解雇される可能性は低くなるのです。しかも、その後、会社の経営がよくなって人を雇うことになった場合には、解雇された人の中から雇用年数が長い順に呼び戻されることになっています。

またアメリカの自動車業界には、「JOBS PROGRM」という独自の失業補償制度もあります。これは、レイオフ(解雇)された従業員が、公的な失業保険の支給期間が終わった場合、自動車業界の作った基金「JOBS PROGRM」から賃金の100%をもらえるという仕組みです。つまり、アメリカの自動車産業の従業員は、解雇されても事実上生活が保障されるのです。欧米の企業というのは、そういう勤労者の権利や生活をしっかり守った上で、解雇や賃下げなどをしているのです。日本のように、会社が厳しいときは、社員は切り捨てて当然、切った後のことはどうなっても知らん、ということではないのです。

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