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ヤフーの株価が1年で半値…キャンペーンに投入した100億円で業績アップはできるのか?=栫井駿介

投資はいいが、どこで利益を出すのか?

気がかりなのは今後の方向性です。

ショッピングもPayPayも、直接的に儲かるものではありません。まして、楽天やAmazon、LINE、メルカリといった競合がひしめく分野でコスト先行でシェアを取りに行っていますが、その先に見えるものがあるのでしょうか。

【出典】2019年3月期第3四半期決算説明資料

【出典】2019年3月期第3四半期決算説明資料

可能性として考えられるのは、金融分野の強化です。スマホ決済で先行している中国のアリペイは、決済データを管理することにより、個人向け小口融資を可能にしています。顧客データと金融を結びつけることにより、強力なビジネスに結び付けられる可能性はあるでしょう。

しかし、それが日本に適用できるかどうか疑問が残ります。かつてSuicaの顧客データを個人が特定できない形で利用していたというだけで批判が起きるほど敏感ですから、まして一人ひとりがランク付けされるようになれば反発は免れません。

また、そもそも日本の個人でお金を借りたい人は、かつてはサラ金、最近は銀行のカードローンを利用してきました。中国ほど個人が金策に困る国ではないように思えますし、金融分野なら楽天が大幅に先行しています。

成長の試みとその痛みは受け入れるべきですが、投資家としてはその先にあるかもしれない利益も示してほしいと思います。

広告事業を見ると割安感強く、一発当たれば上昇しやすい状態

将来性はよくわからない中、支えとなるのが従来からの広告収入です。スマホ対応にも成功し、いまだ伸び続けています。

この分野はいわゆる「金のなる木」であり、追加コストを最小限に抑えながら利益を生み続けることができるでしょう。

その地位を脅かす存在が現れないとすると、過去の業績が参考になります。2016年3月期に達成した最高益をベースとしたPERは、執筆時点で約9倍です。また、昨年度業績をあてはめても約12倍と低水準にとどまります。

つまり、新規事業が利益を生まなかったとしても、割安感が非常に強いということです。もし新規事業が1つでも当たれば、期待されていない分株価は上昇しやすいと言えるでしょう。

バッドシナリオとしては、新規事業で固定費ばかり膨らみ、全く利益を産まないことです。ただし、この場合も経営がきちんと「損切り」を行うことができれば、広告事業部分の価値は維持できると考えます。

現時点での割安感が強い銘柄として、新規事業の方向性を含めて慎重に見極めたいと思います。

image by: Lucian Milasan / Shutterstock.com


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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年3月29日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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