人民元のSDR構成通貨化を止められなかったアメリカ
さて、過去を振り返り、ある程度流れが理解できたでしょう。
私たちは、「常に一体化している」という意味で、「欧米」と言います。しかし、冷戦終結後、欧州はアメリカに反抗的でした。むしろ、「反米多極主義陣営」をフランスが率いていた時期すらある。
そして、私たちは、「米英」という言葉を使います。「アメリカとイギリスは、いつも一緒」という意味で。ところが、この用語すら、いまでは「不適切」になっている。
たとえば2013年8月、オバマは、「シリアを攻撃する!」と宣言しました。イギリスのキャメロン首相はこの決定を支持した。しかし、イギリス議会はこの戦争に反対したのです。
フランスも反対に回り、オバマは孤立。シリア戦争を「ドタキャン」せざるを得ない状況に追い込まれました。
2015年3月、「AIIB事件」が起こりました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国など「親米国家群」がアメリカを裏切り、中国主導「AIIB」への参加を決めた。アメリカは、欧州やイスラエル、オーストラリア、韓国の裏切りを止めることができませんでした。
そして、今回「人民元をSDR構成通貨にする」件。アメリカは、やはり止めることができなかったのです。
ちなみに、主要な「国際金融機関」は2つあります。
1つは、国際通貨基金(IMF)。もう1つは、世界銀行。
そして、IMFのトップは、いつも「欧州人」。
世界銀行のトップは、いつも「アメリカ人」。
今回のIMFの決定は、アメリカ一極支配をぶち壊したい欧州が主導。アメリカは、「同意せざるを得ない立場」におかれてしまったのでしょう。
2つの動きが同時に進行している
このように、中国の影響力が強まる動きが起こっています。そして、
- アメリカの一極支配を打倒したい
- 中国と仲良くして儲けたい
- 距離的に遠いので、中国の「脅威」を感じない
欧州が、中国パワーの拡大を後押ししています。
しかし、一方で、「中国経済は、沈みゆくタイタニック」というのもまた事実。「昇る中国」と「沈む中国」。この2つが同時に起こっている。これは、「国家ライフサイクル」で言う、「成長期後期」の特徴なのです。
『ロシア政治経済ジャーナル』(2015年12月2日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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