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米中貿易戦争を激化したトランプの主張は正しいのか?中国企業の成功の真実=田代尚機

国有企業の香港市場上場を欧米投資銀行が手助け

1992年に行われた鄧小平による南巡講話を経て中国は、市場経済を最大限に取り入れた社会主義体制、すなわち社会主義市場経済体制を目指すことになった。この方針に基づき、国有企業をいわゆる先進国の株式会社に改組する大改革が始まった

国有企業を世界標準の法人にしなければならない。そのためには、国家と企業の間で、資産の別をはっきりさせ、権限、責任を明確にし、政治と企業を分離しなければならない。その上で、科学的で近代的な経営システムを作らなければならない。

欧米の機関投資家が売買の主体となっていて、アジアで有数の進んだ金融システムを有する香港市場に国有企業を上場させる。そのためには、欧米の機関投資家の売買に耐えられるだけの近代的な株式会社にしなければならない。それを全面的に手助けしたのが欧米の投資銀行である。

対象となる国有企業は、重要産業の大型企業が選ばれた。こうして上場する企業は香港のHを取って、H株と呼ばれ、1993年7月の青島ビール<00168>がその第一号となった。そして、不良債権の規模が大きくその分離作業が困難を極めた中国農業銀行<01288>が上場した2010年7月、株式化を通じた国有企業改革は一応の終わりを迎えている。

一連のH株上場に関して、ほぼすべての主幹事が欧米の投資銀行によって占められることになった。グローバルでみて規模の大きな企業のIPOを手掛けることで、彼らは莫大な引受手数料を得ることができた。主要顧客にそれらを販売し、さらに主要顧客が彼らを通して売買することで、彼らは安定して大きな手数料を得ている

ゴールドマン・サックスは2003年秋、投資家向けレポートにおいて、BRICSというわかり易い言葉を使って投資家を啓蒙し、新興国ブームを作り上げた。それは日本にも伝わり、新興国ファンドの一大ブームを巻き起こした。欧米の投資銀行の輝かしいその成功の歴史は中国国有企業改革の成功の歴史でもある。

中国企業がここまで成長してこられたのは、企業組織が世界標準となったからであり、共産党が補助金を支給して国有企業の経営を助けたからではない。対中強硬派は、国有企業の補助金支給に文句を言う前に、中国の成長を糧に膨大な収益を上げた、国際化、自由化の急先鋒である欧米の投資銀行の過去の行動を責めるべきであろう。

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image by : Joseph Sohm / Shutterstock.com

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中国株投資レッスン』(2019年5月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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