中国の民営企業とアメリカの一部組織の関係性
国内投資家たちも多くの欧米市場の機関投資家と同じように、いつかは合意に達するだろうと思っているのだろう。
“株価は戻るに決まっている。乗り遅れたくない”と思う投資家が多いから、急落がチャンスと映り、買いに入ってしまう。そうした投資家が多いのであれば、事態が改善しなければ、短期筋の売りが入り、急落するだろうが、合意に達しそうになれば、一気に資金が流入しそうである。長期投資家は傍観した方がよさそうだ。
もし資金があるなら、自分のリスク許容度次第で、今後もあるかもしれない急落時を狙い段階的に買いに入るか、合意達成直後に一気に買いに入るかのどちらかだろう。
ここからは、少し長期の話をしたい。
トランプ政権、特に対中強硬派は、中国の補助金政策を批判している。しかし、補助金政策があるから中国は強くなったのだろうか?
先週の当メルマガからの続きでもあるが、アリババ、テンセント、華為技術、小米、百度、京東といった民営企業が中国のイノベーションを牽引し、中国経済を発展に導いている。それは、経営者たちのアニマルスピリットによるところが大きいのはもちろんだが、それと同じくらい、アメリカの大学、ベンチャーキャピタル、投資銀行などの影響が大きい。アメリカの一部の組織は中国の民営企業を助けることで、大きな利益を得ている。いわゆる中国の民営企業とアメリカの一部組織はウインウインの関係を築いているのである。
こうした関係は民営企業に限ったことではなく、国有企業にも言えることだ。結論を先に書けば、中国の国有企業改革にもっとも大きな貢献をしたのはアメリカをはじめ、欧米の金融機関である。彼らも中国の国有企業改革を助けることで莫大な利益を上げたのである。
国有企業改革が行われる前の国有企業はどのような経営組織だったのか。1990年代の株式会社化する前の国有企業は、その多くが、中央政府の主管部門、あるいは地方政府の関連組織の一部のような存在であった。さすがに、中央や地方の当局が、企業の生産計画、売り上げ目標、価格、従業員の賃金などを決め、企業はその指令に従うだけというような完全な計画経済からは既に脱却していた。国有企業内で経営計画が作られるようになっており、先進国の企業組織に近づいてはいたが、大きな違いが一つあった。
それは、経営者である工場長が責任をもって作る計画は、当局と相談しながら作るものであり、当局から承認されるべき計画であった。そして重要なのは、その計画を立てたら、よほどのことがなければ達成しなければならない。工場長が結果にコミットするシステムであった。
当たり前のことであるが、計画はどんなに周到に、綿密に作ったとしても、市場環境の変化によって、最適なものではなくなることが多い。そうした実態を無視して、工場長は何としても目標を達成しなければならなかった。なぜなら、達成できなければ責任を取らされるからである。
このやり方は、明らかに市場経済には適さない。