トランプ大統領が最大のリスクに
2つ目のリスクはやはり世界最高のディールメーカーを自認するトランプ大統領にとって、今回の米中貿易交渉の成果があまりにも少な過ぎたことである。
とりあえずは世界中の目を朝鮮半島に向けることには成功したが、米朝首脳会談でも具体的な成果があったわけではないので、早晩、世界の目は米中首脳会談の成果に注がれるはずである。
折しも来年の大統領選に向けて民主党の公認候補選びが熾烈を極めていくなか、もともと中国に対しては共和党以上に強硬姿勢を見せている民主党から、トランプ外交に対して「弱腰」との厳しい批判が浴びせられる可能性は否定できない。
そのような状況が訪れた場合、トランプ大統領が米朝首脳会談の成果を大きく見せようと動くことは十分に考えられること。
その方法としては、前言を翻す、つまり中国側に示した譲歩を取り消すか、実際には中国側から大きな譲歩を得ていた、つまり大きな成果を得ていたと主張するかのどちらかである。
前者であれば市場は大きな混乱を起こす可能性があるし、後者であっても中国経済の鈍化、習近平体制の不安定化などを通して市場を不安定化させることになるだろう。
中期的には、史上最高のディールメーカーを自認するトランプ大統領が手にした米中貿易戦争回避という小さな成果に対する米国内での評価が注目点となりそうだ。
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『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』(2019年7月1日号)より一部抜粋
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