パウエルFRB議長も結果に安堵
トランプ大統領にとっては得られた成果は期待外れだったといえるが、金融市場にとっては米中のガチンコ衝突が取りあえず避けられたことは想像以上の成果だったといえる。
金融市場と同様、今回の米中首脳会談の結果に胸をなでおろしたのは、6月のFOMCで利下げを見送ったパウエルFRB議長だろう。
もし米中首脳会談が決裂に終わり貿易戦争が激化することになったら、「Behind the curve」のリスクが高まりかねない状況だったからだ。
しかし、決裂が回避されたことで金融市場発の景気鈍化が一旦は回避され、次回7月末まで現状の金利で乗り越えられるチャンスが舞い込んだ格好となった。
それはパウエルFRB議長にとっては、纏めきれていないFRBの内部を纏める時間的猶予を得られたことでもある。
米中摩擦緩和を喜ぶ金融市場
FRBによる金融緩和期待が高まる中で米中貿易交渉の決裂回避をうけ、今週の金融市場はまず好感する格好でのスタートとなるはずである(※編注:原稿執筆時点2019年7月1日午前8時。この日の日経平均株価終値は前週末比454円高の2万1,729円と令和最大の上げ幅となっています)。
この組み合わせが米国株式への投資配分を減少させる要素になるはずがないからだ。
米国にとって下半期を迎えアセットアロケーションの見直しが行われるこの時期の金融市場は、時期的に一方向に振れやすい時期でもある。
依然として残る2つのリスク
ただし、金融緩和期待と米中貿易戦争回避という黄金タッグにも、2つのリスクがあると思われる。
1つ目は、FRBの金融緩和期待に関するものである。米中の貿易交渉が決裂しなかったことによって、世界経済を取り巻く環境の悪化は防がれた格好になった。
それは、パウエルFRB議長が6月のFOMC時点で「利下げする必要のない経済状況」だと考えていた9名のFOMCメンバーを説得することが難しくなる可能性が高くなるということでもある。
これは7月のFOMCでの利下げを100%見込んでいる金融市場にとって逆風になりかねないものである。