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トランプ大統領の関税政策は米国にとって逆効果?ドルは1/2に切り下げざるを得なくなる=吉田繁治

経常収支が大きな赤字の米国は、その累積額が対外負債になる

1年に40兆円~50兆円くらいの経常収支の赤字を続けてきた米国の対外負債は、2018年で36兆ドル(3,780兆円)になっています。

対外負債には利払いが必要です。平均で年3%として、1年間に113兆円という大きさです。経常収支が構造的に赤字の米国の対外負債は、基軸通貨(世界の貿易の決済通貨)を続ける限りは増え続けます。

米国が海外にもつ対外資産は、27兆ドルです(2018年)。対外純負債は、9兆ドルです。問題は、この純負債が、大幅な減税をしたトランプ大統領になって、財政赤字とともに年間6,000億ドルにくらい増え続けていることです。

【米国の対外負債の臨界点は、40兆ドルだろう】

試算では、対外負債が40兆ドル(4,200兆円:米国のGDPの約2倍)になるころから、「毎年の対外的な利払いが、対外負債を増やす」という、対外破産モードにはいっていきます。金利の支払いで、元本の負債が増えるようになった企業と同じです。

日本が、対外負債をGDPの2倍(1,100兆円)もかかえるようになったときのことを想定すると、利払い(金利が低くても30兆円/年)が難しくなっていくことからもわかるでしょう。

対外デフォルトが間近と認識される時期に近づくと、米国は、第二のプラザ合意を開いて、「ドルを1/2に切り下げる(1ドル=55円付近)」対策をとらざるをえないでしょう。

米国の対外負債は、ドルが基軸通貨なのでドル建てです。ドル建ての債務は、ドルの切り下げで減らすことができます。

【1985年のプラザ合意の原因も、同じだった】

1985年のプラザ合意(G5:米国・英国・ドイツ・フランス・日本)では、日独がドル売りに協調したので、250円から120円にまで、1/2に切り下げられました。ドルの1/2への下落で大きな損をしたのは、ドル建ての対外資産をもっていた日本とドイツでした。

プラザ合意も、「米国の貿易赤字(国際不均衡ともいう)」が原因で、実行されたものです。当時も、ドルが米国の経済力に対して高すぎるため、米国が貿易赤字を続けるとされました。

その後、34年経ちました。再び「プラザ合意の時期」が近づいています。米国の対外負債は増えつづけるので、ドル切り下げは必然です。

【その時期】

数年後、
・米国の対外負債が40兆ドルに近づき、
・ドルの金利が今より上がったとき、
・ドル切り下げは、米国側が選択できるオプションではなく、増えた金利の支払いができなくなることからの必然でしょう。

150兆円以上に増える、金利の支払いができないからです。

負債が大きくなった企業が、銀行に利払いができなくなると、銀行は不良債権を増やす追い貸しをするか、その負債を不良債権の処理として、カットしなければならない。これと同じです。

国家は、対外的な支払いができなくなっても、対外貿易ができなくなるという倒産はしません。その国の通貨が世界から売られ、切り下がるだけです。

異常なことではなく、金融では常識です。米国が、今のドルの水準では貿易が黒字になることはないので、対外負債は増え続けます。その速度の違いだけであり、「いずれは必然」です。

【世界の外貨準備(1兆ドル:1365兆円)になっているドル】

世界が貿易で使う基軸通貨は、世界貿易の増加とともに、海外の持ち高(米国にとって対外負債:海外が持つ外貨準備)が増えるので、ドルが基軸通貨を降りない限り、米国の対外負債の増加は続きます。

米国は、対外赤字に対しドルを増発すればいいという特権をもっています。しかし通貨増発の特権の有効は、いつまでも続くものではない。借り入れである対外負債には、海外がドルの先行きの価値(期待価値)を信用しなくなる臨界点があるからです。

「債権国の通貨である円とスイスフラン」とは違い、ドルが「安全通貨」と金融市場から認識されていないのは、対外債務がもっとも大きな国の増発通貨だからです。安全通貨ではないということの意味は、「債務国の通貨は、将来の下落リスク」があるという含意です。

ドルは、世界の店頭でも使える基軸通貨として、海外からの買いが多いために強く、しかし、もっとも債務が大きな国の負債通貨です。

1998年のアジア通貨危機のとき、GDPに対する対外負債(海外からの借入金)が大きかったタイ、マレーシア、インドネシア、韓国で起こった通貨危機と同じです。

ロシアは、政府が「旧1,000ルーブル=新1ルーブル」にして、ルーブルを1/1000に切り下げました。これも、通貨の世界では「普通に起こること」です。

Next: トランプ大統領の貿易戦争は、米国にとって逆効果となる?

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