提携はSBIにとって「濡れ手に粟」
さて、ここでSBI証券と島根銀行提携のプレスリリースを読んでみましょう。
2.業務提携の内容
(1)島根銀行のお客さまに対する当社グループの幅広い金融商品・サービスの提供
(2)当社グループの資産運用ノウハウやグローバルなネットワークから得られるファンド情報等の活用による、島根銀行の資金運用の高度化
(3)当社グループならびに当社グループ出資先企業等が有するテクノロジー等の活用を通じた、島根銀行の顧客利便性の拡充および営業コストの最適化 等
ここに書かれていることは、簡単に言えば「島根銀行の顧客にSBIの投信を売って、さらに島根銀行自身にも投信を売る」ということが何の臆面もなく書かれています。
確かにSBIにとっては有益な話です。これまでアクセスできなかったインターネットに馴染みの薄い顧客に対し、島根銀行を通じて商品を販売することができます。
また、島根銀行自身に対しても、貸出先がなくて余った資金で投信を買ってもらうことで、これまた手数料を得ることができます。
これらはいずれもノーリスクで行えるため、SBIにとっては濡れ手に粟の提携なわけです。
島根銀行はSBIとの提携で何を得られるのか?
それでは、島根銀行にとってのメリットは何でしょうか。
投信販売のノウハウ獲得、自己資金運用の高度化という点では、なあなあで取り組んでいたこれまでよりは良くなる可能性があります。
一方で、預金しに来た高齢者に不必要な投資信託を売りつけてしまう可能性が否定できません。これはゆうちょ銀行でも似たような状況が見られます。
また、銀行も言われるがままにしていると、利回りが高くてもリスクの高い商品を売りつけられたりすることも十分に考えられます。
今回の提携で、島根銀行はSBIホールディングスの連結対象になっていません。すなわち、銀行の業績改善にまでコミットしているわけではないのです。
そもそもSBIに地域活性化や銀行経営のノウハウは期待できません。それでも地方銀行を傘下に収めようとするのは、資本が足りない弱みにつけこみ、自社商品の販売先を増やそうとしていると推測できます。
今回の提携は、あくまでSBIの営業戦略の一貫と考えたほうが良いでしょう。今後の地方銀行の再生に期待するのは時期尚早です。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
image by: madamF / Shutterstock.com
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年9月18日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。