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リブラ創設に危機感を持っていた中国に神風、中央銀行デジタル通貨の発行は来年以降に=田代尚機

アメリカがリブラを認めないのは、中国にとっての神風に

ザッカーバーグCEOは10月23日、アメリカ下院金融委員会の公聴会に出席、約6時間にわたり、50人近い議員の質問に答えたが、マネーロンダリングや、テロ、犯罪の資金供給手段になりかねないといった批判が相次いだ。

議会の同意なしにサービスを開始することなど、できるはずがない。2020年前半のサービス開始を目指していたが、到底間に合いそうにない状況だ。

ザッカーバーグCEOは、中国人民銀行が人民元デジタル通貨発行に向けて急ピッチで作業を進めていることに対して、「アメリカがイノベーションを主導しなければ、金融におけるリーダーの地位が危ぶまれる」と指摘している。

もっとも、アメリカ議会をはじめ各国の金融当局が「リブラ」に強い警戒心を抱くのは当然である。「リブラ」の創設は、国際通貨を民間企業が発行しようとしているようなものである。ザッカーバーグCEOは、「素早く動き、破壊せよ」を信条としているそうで、野心的で、攻撃的な性格である。これでは、議員たちは、「フェイスブックがイノベーションを主導して、金融界のリーダーになろうとしている」と感じても無理はない。

結局、アメリカは「リブラ」の創設を簡単には認められないでいるが、そのことは、「リブラ」創設に強い危機感を持っていた中国にとっては神風である。

中国金融当局は長年、資金の違法流出に悩まされ続けている。

アジア通貨危機の教訓があるので、金融当局は資金の流出入を管理することが如何に大切かということを熟知している。だからこそ、未だに為替取引をオンショア、オフショアにはっきりと分離したうえで、オンショア取引については外貨管理センターに集中させ、中国人民銀行がその大枠を管理するといった体制を堅持している。

内外のアービトラージができない状態を保ちつつ、オンショアにおいては主管部門の立場を利用して市場参加者に対して目立たない形で影響力を行使しつつ、オフショアにおいては自らが市場参加者として介入するなど、市場操作の仕組みを設けている。

制度によって、資金の流出入を厳しく制限している。だから、管理の行き届きやすい銀行については、資金の流出入はそれほど重大な問題とはない。

しかし、現金(M0:紙幣、硬貨など)を海外に持ち出したり、それを持ち込んだりする形での違法な取引については管理が難しい。内外金利差が拡大したり、金融当局の為替誘導があからさまであったりした場合には、管理しきれない人民元の流出入が生じてしまう。

2015年8月11日の対米ドル為替レート基準値の切り下げや、その後の人民元安誘導では、予想外の資金流出が起き、それを制御できない状態が長く続くことになった。当局としては、為替市場の安定を確保するために、こうした資金流出を排除することが重要な政策課題となっていた。

Next: 中国は資金流出を排除する対策として、デジタル通貨の研究を進めていた

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