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リブラ創設に危機感を持っていた中国に神風、中央銀行デジタル通貨の発行は来年以降に=田代尚機

リブラが実現すれば、中国人のグローバルな運用で中国資金は流出へ

その解決策の一つが、人民元デジタル通貨の発行である。

金融当局はこうした問題意識があるため、2014年から人民元デジタル通貨の研究を進めてきた。フェイスブックは人民元デジタル通貨を強く意識しているが、中国側も同じくリブラに強い危機感を感じている。

違法な取引を行う者が後を絶たず、そのことが人民元流出に繋がっているが、リブラが発行され、中央銀行の管理の外でそれが運用され始めたら、中国の金融システムは崩壊する。利に聡く、投機を好む中国人は、リブラを使い、グローバルで資金を運用し始めるだろう。そうなれば、現在の閉鎖的な金融システムを維持することは不可能となる。中国人の手で、中国金融市場は崩壊させられかねないのである。

中国人民銀行(中央銀行)は8月2日、2019年下半期の活動に関する電話会議において、法定デジタル通貨に関する研究開発の速度を加速させると発表した。中国人民銀行支付結算司の穆長春副司長は8月10日、国内の金融フォーラムで、“中央銀行デジタル通貨の研究は既に5年に及ぶ。発行はすぐに現実のものとなるだろう”などと発言している。その後、リブラへの国際金融市場の批判的な姿勢が確認されるにつれて、中国側の慌てた態度は落ち着き始めており、その後の要人発言などから、発行は来年以降となりそうな状況である。

デジタル通貨の流出入を制限するためには、外国政府はインターネットを遮断しなければならないが、そんなことは今更できない。自由人が、勝手にデジタル通貨で支払ったり、受け取ったりすることを、外国政府が法律で禁止したり、実際に強制力を以て排除するのは難しい。

世界の中央銀行はリブラ発行を阻止することに必死であるが、中国が自国の通貨をデジタル化することを制限するのは難しい。各国がデジタル通貨の発行を急がなければ、グローバルな金融決済通貨がドルから人民元へと劇的に変わってしまう可能性すらある。

もっとも、中央銀行が通貨をすべてデジタル化することは、現状の技術水準では到底不可能である。中国においても、通貨のデジタル化は比較的ゆっくりとしたペースで進むことになるはずだ。

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image by : Ascannio / Shutterstock.com

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中国株投資レッスン』(2019年11月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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