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2021年、米中は国交断絶へ?FBIが今さら警告する中国の人材引き抜きと技術奪取=高島康司

FBI報告書の内容

この報告書は、「米研究事業への脅威:中国の人材登用計画(Threats to the US Research Enterprise: China’s talent recruitment plans)」というタイトルで、11月19日に米上院の「国家の安全保障と政府の政策に関する小委員会」に討議資料としてFBIから提出されたものだ。

それには、中国のアメリカにおける人材の引き抜きや登用の国家の安全保障に与える脅威について細かく調査した結果が掲載されている。105ページの報告書だ。

この報告書によると、中国には約200に及ぶ人材引き抜きと登用を目的とした計画が存在するとしている。それらの多くは政府が主導しており、中国の科学技術発展のために必要な人材を系統的にアメリカから引き抜き、知的財産権を継続的に侵害しているとしている。

これまでアメリカは、「全米科学財団」や「国立衛生研究所」、そして特にエネルギー省が管轄する多くの国立研究所は門戸を外に開き、海外から優秀な研究者を引き付けてきた。こうした研究所のもたらした成果によって、現在の我々の生活が成り立っているといっても過言ではない。

しかし中国は、アメリカのこうした研究所の開放的な方針を悪用し、多くの在米研究員を中国が必要とする科学技術や軍事技術を得るために計画的にリクルートしてきた。彼らは、高額なサラリーと充実した研究環境を約束されて引き抜かれていた。

FBIの調査では、引き抜かれて中国に移動する前に機密情報をダウンロードした研究員や、アメリカの研究所から研究費を得ているにもかかわらず、中国政府から秘密裏に研究費を得ていたケース、また米財団から研究費を得るためにウソの報告をしていたケースなどが多くあったとしている。

この報告書の調査対象はすべて国立の研究機関である。そこの研究員が中国政府にリクルートされているということは、米国民の税金の支出で行われた研究の成果が中国に利用されていたことになる。これらはアメリカに所属すべきものだ。

報告書では、これこそ中国による知的財産権の侵害として中国を厳しく告発している。

2008年から始まった「1,000人計画」

こうした人材登用計画のなかでも、報告書で一番の批判の対象になっているのは、2008年に胡錦涛政権が始めた「1,000人計画」である。

これは2,000人の先端的な研究分野の研究者をリクルートする計画だったが、2017年には7,000人の高度な専門家の引き抜きに成功し、当初の目標を大きく上回った。

引き抜かれた研究員のほとんどは、中国の国立大学や、国立の研究機関で高いサラリーが提供されて研究を継続している。

こうした研究者のなかには、アメリカの研究所に在職していたときからすでに中国政府の資金提供を受けていた人々もおり、彼らはその事実をアメリカには報告せず秘密にしていたという。これは、アメリカにおける研究資金提供の規定に違反する行為だ。

そして中国政府は、「1,000人計画」を中心にして、2008年から2020年までにGDPの15%に相当する2兆ドルを人材のリクルートのために支出したとしている。

これは中国政府にとっては、非常に見返りの大きい計画だった。アメリカ国民の税金が支出された研究の成果を中国が獲得し、自国の軍事と科学技術の発展のために使うことができるのである。

報告書では、中国政府は「1,000人計画」の実態を隠蔽するために、2018年10月にこの計画にかかわるすべての情報をネットから削除したとしている。

いまでは、この計画で中国に引き抜かれた研究員や専門家の名前は分からなくなっている。

Next: 狙われたのは「エネルギー省」研究員? 国家ぐるみで知財を盗む中国

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