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クルーグマンと安倍首相の議事録『Meeting with Japanese officials』を読む=吉田繁治

構造改革より財政拡張の時期

Some other kinds of reform, the Abenomics, by expanding the future labor force helps to offset the demographic headwinds that the economies face. So all of that is good but I do worry that sometimes the talk of structural reform becomes an excuse not to deal with the primary immediate issue of sufficient demand, of fighting deflation or low-flation, inadequate inflation, which has got to rely on monetary policy. But as I said, that has limits and fiscal policy which needs to be more focused on that immediate need than it has been.(4)

その他のアベノミクスの経済改革、例えば、(1億総活躍社会としての)将来の労働力の拡張は、日本経済が直面している人口の構造問題を解消することになるかもしれません。それはそれで、いいことです。しかし、私が不安に思うのは、この構造改革が言い訳になって、金融政策にだけ依存して、デフレ(または低インフレ)と戦うための、もっと肝心で直接的な、充分な需要を作ることを行わない言い訳になることです。

金融政策だけでは、ここまで申し上げてきたように、(インフレ効果に)限界があります。今行うべきは、過去より、はるかに直接に必要になった財政政策の実行です。<翻訳(4)>

出典:Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16 [PDF]

スティグリッツは消費税増税の延期を言い、クルーグマンは増税の延期(または解消)と、赤字財政の拡張を言っています。

安倍首相の質問とクルーグマンの回答

クルーグマンの「果敢な財政出動に舵を切れ」という提言に対し、安倍首相は累積債務問題を訊ねています。
(注)安倍首相の発言は、オフレコとされていますが、英語では公開されています。日本の記者会見や国会でも言えばいいのにと思うようなことです。安倍首相も米国に対しては、まともになるのかもしれませんね

But we worry about the accumulated debt. That is a source of another concern. What to do about it? But Governor Kuroda took a policy to introduce negative interest rates so that the 10year JGBs yield turns negative at the moment. So, we would like to take advantage of this situation and Japan should come up with a fiscal spending. That is what some of the people are saying right now within Japan. Do you have any view on this? Any observation on this point?(5)

(安倍首相)しかし、私どもは、政府の累積債務の問題を心配しています。これが(消費税の増税を停止することの)不安の源です。これについて、どうすべきでしょうか。黒田日銀総裁は、現在、10年物国債の金利を、マイナスに導く政策を導入しました。われわれは、マイナス金利という状況を利用して、財政支出の拡大を図るべきかも知れません。日本でも、一部の人が言っていることです。これについて、ご意見ないし見解をお持ちでしょうか?<翻訳(5)>

出典:Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16 [PDF]

安倍首相は、消費税の増税を停止して財政赤字と国債発行を増やす財政拡張をすれば、政府の累積債務の問題はどうなるだろうかと質問しています。クルーグマンの回答は、以下です。

Third point I would make is that the concerns about the debt, I don’t want to wave away entirely but one thing we have learned from Japan but also from other advanced countries is that stable advanced nations that borrow in their own currencies have a very long road for them to have a fiscal crisis. People have
been betting against JGBs since about 2000. All of them have suffered financial disaster. The robustness of the market is very strong. It is even hard to tell a story. If someone says Japan would belike Greece, tell me how that
happens.(6)

(クルーグマン)3番目に、政府債務の懸念についてです。私は、この問題を完全に無視はしません。しかし、われわれが日本と他の先進国の事例から学んだのは、安定した先進国で、政府が自国のマネーで借り入れをしている場合、財政危機に至るには、非常に長い道のりがあるということです。

2000年から日本国債の下落(=金利の上昇)に賭ける人々もいました。それらの人は全員、破産を蒙っています。(日本の)国債市場は非常に頑健です。円国債の暴落というシナリオは、言葉上でいうのも難しい。日本がギリシアのようになると言うのなら、どうしたらそうなるのかと聞きたいくらいです。<翻訳(6)>

出典:Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16 [PDF]

クルーグマンは、従来から「自国のマネーでの先進国の負債は、何ら問題ない」と言い続けています。日銀がマネーを増発すれば、それで足りるからだという。「政府が自国のマネーで借り入れをしている場合は、財政危機に至るには、非常に長い道のりがある」というのがこれです。

果たしてクルーグマンの言う通りか?当方は異なる見解をもっています。ここでは、その理由を短くまとめて示します。

Next: 日本政府の累積債務問題を考える

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