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クルーグマンと安倍首相の議事録『Meeting with Japanese officials』を読む=吉田繁治

リフレ策としての金融政策は、欧州でも無効になっている

If we look elsewhere, if we look in Europe, despite another very able essential banker, the ECB seems to be losing traction. Here, as you know better than I, inflation expectation seems to be fading. Wage growth is not what it should be. We are seeing that the policy that has been the principle lever for trying to deal with this global weakness is not as effective as we had hoped and not as effective perhaps as it seems to be recently.(2)

例えばヨーロッパに目を向けても、もう一人の有能な銀行家(ドラギ氏)がいるにもかかわらず、ECB(欧州中央銀行)は牽引力を失いつつあります。皆さんがよく知っておられるように、欧州のインフレ期待(=インフレ予想)は、萎(しぼ)んでいます。賃金の上昇もあるべき水準よりは低い。

われわれは今、世界的な経済の弱さに対処する、もっとも肝心なテコであるべき政策(金融緩和)も、過去に期待していた効果がないこと、そして最近まで効果のように見えていたものすら失っているのを、目の当たりにしつつあるのです。<翻訳(2)>

出典:Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16 [PDF]

コメントする必要はないでしょう。クルーグマンは、金利がゼロの流動性の罠に陥った日本に異次元緩和を勧めた張本人です。異次元緩和が、リフレ策として失敗だったことをクルーグマンは述べています。

ただし日銀と政府は、決して「異次元緩和」が効果を生んでいないことを認めません。認めれば、責任の追及を受け、政治的に不利な位置に立つことになるからです。

日本政府が採るべきは、財政の拡張政策である

Fiscal policy. Everything we have seen for the past seven years suggests that fiscal policy remains effective, especially effective in these circumstances. It has been very difficult to apply it, a few years of bad debt, political conflict, the Europe is divided among counties, the United States is divided between parties, but fiscal policy iseffective and the global environment right now is one where economies really, really need fiscal support. The idea that one should be prioritizing long-run budget issue over fiscal support now seems to me to be extremely misguided. Obviously I am talking about the consumptiontax here.(3)

次は財政政策です。われわれは(リーマン危機の後の)過去7年間、財政政策は有効であり続けていることを見続けてきました。とりわけ、現在のような環境では有効です。財政政策は、(リーマン危機後)数年間の大きな不良債券の中では、米国では政党間の政治的な対立があり、欧州では国が分かたれていることから、実行がとても難しいものでした。しかし、この財政政策は有効です。現下の世界経済は、真底から財政政策を必要としているのです。財政支援より長期の政府予算の問題を優先すべきだという考えは、今は、まるで見当違いでしょう。私がここで言っているのは(まずは)消費税のことです。<翻訳(3)>

出典:Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16 [PDF]

異次元緩和の金融政策が効果を生まなかったから、今度は財政政策という風に、クルーグマンは主張をずらしています。

2011年3月の東日本大震災以来、政府は、復興予算として総額26兆円(年間5兆円)を計上しています。GDPで言えば1年に5兆円(GDP比1%)が、拡張財政になっています。

人手が必要な土木・建設事業が多いため、「復興特需」で建設業は潤って、失業率は下がり、わが国の建築単価は上がっています(物価の上昇)。復興需要がなかったら、わが国のGDPは、毎年1%は低かったはずです。

財政支出は、このようにGDPの増加と物価の上昇に直接の効果をもちます。この財政拡張を日本に行えと薦めるのが、『流動性の罠』での金融緩和の主張を変えて、変身したクルーグマンです。

消費税の増税(2%)は、GDPに対してはほぼ5兆円分の緊縮財政に等しい。したがって、この消費税の増税をやめるべきだと言っています。

Next: 構造改革より財政拡張の時期/安倍首相の質問とクルーグマンの回答

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