コストを消費者に負担させるだけ
消費者にしてみれば、レジ袋有料化によるコスト高を回避するためにこれを買わず、前の袋の使いまわしやエコバッグを使うことにしても、ゴミ捨て用にポリ袋を買えば、コスト高を回避できず、しかもコロナウイルスの感染リスクや雑菌の繁殖リスクにさらされ、消費者が小売店のコストを肩代わりするだけで消費を冷やし、しかも社会的な、つまり環境面での成果にはなかなかつながりません。
プラゴミの削減が目的でレジ袋の有料化を決めたのであれば、紙袋に切り替えればよいはず。実際、デパ地下のパン屋では従来、「ビニール袋か紙袋か」と聞かれました。環境目的であればすべて紙袋に切り替えれば済む話です。
それを紙袋まで有料化するのは、環境対策の意図を超えています。消費者の負担を高め、消費の足かせになるだけです。
このレジ袋有料化を推進した原田義昭前環境大臣も、これによるプラゴミ削減効果は大きくないと認めています。それでもプラゴミ削減の象徴としての意味がある、と述べています。
日本も海洋汚染など環境問題に関心を持っているとの姿勢を示したかったようで、そのコストを消費者に付け回したことになります。
環境対策のはき違い
レジ袋有料化を環境対策の柱とするのは相当無理があります。
有料化でコストをかけ、需要を減らすのであれば、環境負荷の少ない代替商品を提供する必要があります。これを同時に進めないと、単なるコスト高を押し付けるだけになります。
コーヒーショップでもプラスチックのストローをやめ、代わりに紙や別の素材のものを提供しています。有料化すればプラスチック製品の需要を減らせると考えるのはあまりに短絡的です。
実際、レジ袋有料化でその使用を減らそうとしても、食材ら容器、パッケージにはプラスチック容器が氾濫しています。ペットボトルもしかりです。これらを放置して、レジ袋だけ有料化というのもおかしな話です。
環境問題を推進するのであれば、レジ袋有料化の前に考えるべきことが山ほどあります。海洋に流れ込んでも水に溶ける新素材の開発も進んでいます。
こうした新素材開発に政府が支援するほうが経済効果も大きくなります。
またプラゴミのリサイクルや、焼却施設の増設、焼却の際の熱エネルギーを温泉、暖房などに再利用したり、CO2や有毒ガスの処理技術を開発するなど、環境対策として考えるべきことは多々あります。