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レバノンポンドの将来【フィスコ・コラム】

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債務不履行(デフォルト)に新型コロナウイルスが追い打ちをかけたレバノンにとって、首都を襲った爆発事故は国家として致命傷になりそうです。内閣の総辞職で国家の実質的な機能も失い、通貨ポンドの地合いは悪化する一方です。


8月4日にベイルートの港湾地区で発生した大規模な爆発は、200キロ以上も離れたキプロス島にも衝撃波が及びました。その時の衝撃や爆風、あるいは瓦礫(がれき)の下敷きになり、これまで150人超が死亡、5000人が負傷、そして30万人が家を失ったもようです。デフォルト後にコロナ禍に見舞われ経済の混乱が続く最中、食糧難も深刻化しつつあり反政府デモが全土に拡大しています。


レバノンの旧宗主国であるフランスの主導で9日に行われた主要国首脳との電話会談で、数カ国が2.5億ユーロ(300億円超)の拠出や医薬品、食料品の提供などを決めました。ところが、レバノンのディアブ首相は翌10日、内閣総辞職を発表し、混迷の度合いが一層と深まっています。国家の再建に向けて動き出さなければならないタイミングで、政権を放棄してしまったためです。


国内の政情不安定化は避けられず、レバノンポンドの暴落も見込まれます。公式レートは1ドル=1507.50ポンドで固定されていますが、実勢の通貨価値はもともと低く、闇レートでは昨年末に2000ポンド付近で取引されていました。しかし、コロナ禍やデフォルトで下落ペースが加速し、4月には3000ポンド台、6月には5000ポンド台、そして一気に9700ポンドまで下落する場面もありました。


その後ポンドは緩やかに持ち直し、足元は7100ポンド台で落ち着いています。しかし、物資のほとんどを輸入に依存しているため、極度の通貨安は物価を押し上げ市民生活を圧迫。国家の機能も事実上麻痺した状況で、通貨安に歯止めがかからなくなります。ポンドは、かつてのジンバブエドルのように天文学的なインフレに陥った挙句、やがて法定通貨として廃止されてしまうのでしょうか。



国際通貨基金(IMF)の今年4月時点での予測によると、レバノンの実質国内総生産(GDP)成長率は2020年は-12%と見込まれていましたが、大幅な下方修正は言うまでもありません。反政府活動は広がる一方で、新型コロナ感染も急激な勢いで増加しています。このままいけば内戦が避けられないでしょう。その内戦も、宗派や民族が絡み合うだけでなく経済的な格差まで含め相当に複雑化しそうです。


一般的には、国難に直面している事態で、首相が簡単に政権を放り出すなど考えられません。が、多くの宗派が共存するモザイク国家では、もはや調整不能と推測できます。とはいえデフォルト、コロナ禍、大規模爆発と災難続きのレバノンでは、アウン大統領が早急に内閣を発足させ、再建に着手するしかないように思えます。ホームレスになったとされるカルロス・ゴーン氏も、そう考えていることでしょう。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)
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