「米国の敵」を束ねて世界覇権を狙う
これは、中国が英米の干渉を恐れる必要がないほど、力をつけたという自信の表れだとも取れる。
中国の途上国68カ国への融資状況で、18年末の残高は1,017億ドルと、4年間で約2倍に急増し、世銀の1,037億ドルに迫った。この間、世銀は4割増、IMFは1割増だった。
中国の金利は融資期間が比較的短いにもかかわらず平均3.5%と、IMFの0.6%や世銀の1%を大きく上回る。
途上国は融資の条件として財政規律などを迫られるのを嫌う傾向が強い。金利が高くても中国を頼るのは、こうした制約がIMFなどに比べて少ないためとみられている。
「香港の情勢を批判するのは中国への内政干渉にあたる」。中国が統制強化のために施行した「香港国家安全維持法」を巡り、6月末の国連人権理事会で53カ国が中国を支持した。中国批判の声明に加わったのは日本を含む27カ国にとどまり、ほとんどは先進国だった。
ロシアは長引く米国の経済制裁から中国へ歩み寄り、トルコは米国の中東政策の失敗からロシアに、ひいては中国に歩み寄った。ロシアと中国は軍事同盟を結んで合同演習を繰り返し、ロシアの5G網は中国が請け負うことになった。トルコは米国の反対を押し切って、ロシア製の兵器を購入した。
中東ではイランに続き、サウジアラビアやイラクも中国に近付いている。サウジはジャーナリスト、カショギ氏暗殺を米国から責められたためと、米国がいつまでたってもイスラエル優先を捨てないからだ。
イスラエルには核兵器があるが、アラブ諸国にはどこもない。サウジの核開発には中国が協力している。一方、イラクはフセイン政権が潰されただけで、事実上の無政府状態に置かれている。アラブのプライドが傷つけられたのだ。
端的に言えば、米国にいじめられてきた国々が、最近になっていじめられるようになった中国と組んでいるのだ。
経済的に疲弊しているこれらの国々にとって、中国の資金力と購買力は大きな魅力だ。技術力も高い。中国とすれば、ロシアの核とサウジの石油があれば、米国と戦える。途上国の票があれば国連など国際機関でも戦える。
あるいは、香港を含め国内で高まってきていた抵抗運動をこのままでは制御できなくなるとの危機感の表れだとも受け取れる。
いずれにせよ、英米政府だけでなく、グローバルな中国民族を敵に回してでも守りたいもの(体制)があったということなのだろう。
賽は投げられた、と思う。
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『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2020年8月3日号)より一部抜粋
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