次期首相は菅義偉氏が濃厚となっており、本人はアベノミクスを踏襲すると発言しています。市場もそれを期待しているでしょうが、実際に菅政権が誕生した場合、安倍政権とはまったく違ったものになる可能性があります。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年9月3日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
まともな総裁選もやらずに菅総理誕生へ
安倍首相の辞任発表から1週間が過ぎました。後継争いはどうやら菅官房長官が圧勝で、少なくとも安倍首相の任期の残り1年を受け継ぐのは間違いなさそうな状況になりつつあります。
それにしても、まともな総裁選もやらないというのは、実に足元の自民党のおかしさをつぶさに反映したものと言えるでしょう。
菅義偉氏は第二次安倍政権を官房長官として支えてきた存在ですから、安倍政治の悪事・捏造・隠蔽といったものをすべて共同正犯的に支えてきた氏がそのまま次期首相として継承し、石破氏を完全排除していくことが一番リスクが少ないと見ているのかもしれません。
しかし、菅政権が成立しても、これまでの安倍政権とはかなり様相の異なる体制に変更されそうな気配が強まりつつあります。それは、周辺を支える官僚のパワーバランスに大きな変化が起ころうとしていることに起因する問題です。
安倍官邸の影の最高権力者・今井尚哉秘書官
安倍政権といえば、今井尚哉首相補佐官の存在を忘れてはなりません。首相と一心同体でこの7年8か月の政権運営を強く支え、強くコントロールしてきました。
この今井氏は経産省のキャリア官僚で、06年発足の第一次安倍内閣で事務の首相秘書官を務めたものの、安倍内閣が1年で瓦解したことから一緒に退任。その後、失意の安倍氏に寄り添い励ますことで、第二次安倍内閣をスタートさせた中心的人物とされています。安倍氏のたっての希望で同省を辞し、政務の秘書官としてこの長い期間を共にしてきた極めて特別な存在です。
アベノミクスをはじめとする安倍政権の政策の全体像はすべからく今井氏が絵を描いているとされており、2016年の伊勢志摩サミットでは各国首脳に世界経済危機の予兆があるとする通称「今井ペーパー」なるものを無理やり配り、物議を醸しだしたこともあります。
そのくらい力をもって政権運営をしてきており、2017年の消費増税実施のタイミングでは、第一次安倍政権時代に事務担当秘書官を務めた財務省出身の田中一穂氏を強引に説き伏せることで、消費税10%の見送りを実現させた実績を誇っていると言われます。