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決壊した1ドル110円の防波堤 「安倍政権後」の円安シナリオ消滅も=斎藤満

見限られたアベノミクス

また、外人投資家が期待した成長戦略、規制改革、TPPも進まず、逆に彼らが評価しない「ばらまき」策にシフトしてきています。

「アベノミクス」への期待で外人は13年、14年で都合16兆円も日本株を買い越し、これに合わせてヘッジの円売りをしました。それがこのところ巻き戻され、ヘッジ・ファンドのみならず、年金などによる現物売りも広がっています。

外人による株売りは約8兆円に上るともいわれますが、裏を返せばまだ半分残っています。外人による株売りは、一部GPIFや郵政関係でカバーした模様ですが、その運用の縛りからすれば、これにも限界があります。この先、外人がさらに売り込んで来れば、株も為替もなかなか抑え込むのが難しくなります。

マイナス金利策により、円債への投資が難しくなり、外債投資へのシフトが期待されたのですが、年度替わりの4月になってもこの荒れ相場では、生保も手を出しにくく、為替リスクを避けたい銀行には、スワップ・コスト(ベーシス)の上昇が、ドル債投資を抑制しています。

「安倍政権後」にも影響、100円割れは時間の問題に

政府はアベノミクスもまだ道半ば、と言いますが、ドル円は日銀の「バズーカ」追加緩和以前のレベルに戻ってしまいました。このまま「公共事業の上期8割の前倒し」や低所得者への還付金などのばら撒き路線を続ければ、外人による株売り、円買戻しが進み、安倍政権後の円安が消滅するリスクも払しょくできません。

日米金利差(2年国債で約1%)で説明できるドル円相場は1ドル90円台がせいぜいです。日銀の緩和策に神通力がなくなり、アベノミクスへの期待がさらにしぼむ中では、一段の円高に戻る可能性が高く、政治的にこれが止められないと見れば、1ドル100円割れも時間の問題となります。

日本発の株価不安、リスク・オフが欧州、米国に波及するのは好ましくないので、一段の円高株安が進んだ場合には、日銀の追加マイナス金利と、政府による国債増発込みの経済対策をまとめ、5月のサミットに臨むことになるかもしれません。

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マンさんの経済あらかると』(2016年4月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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