飲食は“半調理品”の時代へ
映画館は席が近く、密集状態になりますが、マスクをしたまま鑑賞するため、感染リスクはさほど高くありません。一方で、飲食店は、食事をする時にマスクを外し、食後におしゃべりをするため、感染リスクが低いとは言えず、なかなか客足が戻りません。
そのため、飲食店、スーパー、生鮮ECは、半調理品の販売に力を入れています。半調理品は、火鍋であれば、具材とスープがセットになったもので、冷凍だったり、ビニールパックだったり、形態はさまざまですが、鍋に開けて、火を入れるだけで食べられるというものです。この他、有名レストランの料理なども、火にかけるだけ、温めるだけ、具材をひとつ追加するだけという半調理品を発売し、これが歓迎されています。
つまり、飲食店に行って食べるのではなく、自宅で簡単に調理して、本格レストランの味を楽しみたいと考える人が増えているのです。
この半調理品は、生鮮ECや新小売スーパーの戦略商品になってきています。生鮮ECとは、野菜や肉、魚といった生鮮食料品をスマホで注文すると、30分から1時間で配達してくれるというサービスです。なぜ短時間で配送できるかというと、前置倉という仕組みを採用しているからです。前置倉というのは、小さな冷蔵施設を備えた倉庫のことで、これを配達エリアの中に多数点在させ、そこから配達を行うので、短時間で配送ができるのです。大体、ひとつの前置倉庫が半径2〜3kmのエリアを担当するのが一般的です。
この前置倉は、配送時間の短縮には大きな効果をもたらしますが、ひとつ大きな欠点があります。それは商品点数を増やすことができないということです。前置倉は大きくはなく、担当する顧客数も数百人から数千人規模です。この規模だと、よく売れる食材しか倉庫に置くことができません。珍しい食材を置くと、注文が入らなければ、廃棄ロスが出てしまうからです。
そのため、生鮮ECで注文できる食材というのは誰もが買うものばかりになってしまいます。日本で言えば、キャベツと大根と豚肉だけ。ミツバは置いてあるけど、パクチーは置いていない。キムチと浅漬けは買えるけど、味噌漬けは買えないというようなことが起こります。
平日の夕食をささっと作って食べるというような場合は、生鮮ECは非常に便利です。しかし、休日に少し変わった料理を作りたいとなると、生鮮ECだけでは食材がそろわずに、結局大型スーパーに買いにいかなければならなくなるのです。
この問題が半調理品で解決されました。休日でも半調理品を買えば、あとはサラダなどのサイドディッシュを添えればいいだけになるので、生鮮ECだけで買い物が済み、なおかつ、平日とは違った少し豪華な食事ができるようになります。半調理品なので、調理の手間もほとんどありません。
既存スーパー、生鮮EC、新小売スーパー、さらには飲食店もこの半調理品には力を入れていて、なおかつよく売れています。飲食は、飲食店に行って食べるものではなく、自宅で食べるものになっていくかもしれません。
手ぶらショッピング&フードデリバリー
都市で休暇を過ごす定番がショッピングです。ショッピングモールや百貨店に行き、いろいろな商品を見て、買い物を楽しむ。休日の定番です。
ここにも変化が起きています。それは、手ぶらショッピングです。今、百貨店やモールで注目されているのが「到家サービス」です。当メルマガでも以前に紹介しました。スマホで注文すると、1時間ほどで自宅に配達をしてくれるサービスです。
国慶節の間、モールや百貨店には賑わいが戻ってきましたが、買い物をしても自分で持って帰らず、この到家サービスを利用して、自宅に配送してもらう人が目立ちました。今年の国慶節のモールや百貨店では、両手にたくさんのショッピングバッグを持った買い物客がめっきり少なくなったそうです。
また、カフェではなく、公園などの屋外スペースでお茶をするということも当たり前になってきました。ウーラマによると、軽食や飲料を自宅や職場以外の場所を指定してフードデリバリーを注文した数が、国慶節期間は全国で5月の連休の2倍になり、特に北京では5倍近くに増えました。
カフェも室内であるために、なんとなく避けたい気持ちがあるばかりでなく、何人かでそれぞれ好きなものを注文できることがいいのだそうです。カフェに行けば、そのカフェのメニューから選ぶしかありませんが、公園のテーブルなどであれば、それぞれが好きなものをそれぞれにフードデリバリーして楽しむことができます。そうして、何時間もおしゃべりをしてのんびりするという光景がよく見られたそうです。