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コロナ後の大型連休はこう変化。中国「国慶節」の消費者動向にヒント=牧野武文

観光地での行列は消滅した

中国の観光地の多くが入場券を必要としています。故宮博物館や庭園のような観光地ばかりでなく、日本でも有名な「烏鎮」(ウーチン)のような水郷なども村全体が公園化されていて、入場券が必要になります。

今年は、文化旅行部の指導もあり、このような観光地の多くが、入場者数の制限を行い、事前予約制を採用しています。そのため、以前はどこの観光地でも当たり前だった、チケット売り場での長い行列というものがなくなりました。スマホでチケットが購入できるようになったからです。入場制限数に達した場合は売り切れとなります。

この事前予約制は観光客からの評判もいいようです。なぜなら、朝、ホテルで、あるいは観光をしていて、ある観光地に行きたくなったら、スマホを開いて、チケットが購入できるかどうかを確かめます。チケットを購入しておけば、到着してからすぐに入れるのです。そして、中に入っても、以前のような過密の混雑はありません。

以前は、スマホでチケットが買える観光地は多くはなかったので、現地に行ってみるしかありません。チケット売り場では長い行列ができ、故宮博物館のような有名な観光地になると、国慶節期間であれば、チケットを買うだけで1時間、2時間は普通のことでした。

そして、中に入れば、芋の子を洗うような混雑で、観光どころではありません。この状態が、奇しくも感染防止の制限により大きく改善されました。多くの観光客が、新型コロナの不安がなくなっても、事前予約制を続けてほしいと考えていることから、今後は、観光地に行くのには事前にスマホでチケットを買うというのが当たり前になる可能性があります。

映画チケットの予約枚数が増加

旅行に行かない人々は、国慶節をどう過ごしたのでしょうか。

ここでも行動単位は家族のようです。家族で映画を観に行くというのが今年の国慶節の典型的な過ごし方だったようです。映画チケットの予約サービスなどを行っている「アリババ大文娯」のデータによると、3人以上の家族チケットの売れ行きが昨年の国慶節から68%も増えました。

特に注目されたのがアニメーション映画『姜子牙』のヒットです。姜子牙とは太公望のことであり、中国神話アニメーションシリーズの第2作にあたります。アクションシーンも多く、親子で楽しめる映画です。

この『姜子牙』は、本来は春節休みに公開される予定でしたが、コロナ禍により公開延期となり、この国慶節でようやく公開されることになりました。多くの人にとって、久々に映画館で見る映画であり、子どもたちにとっては長い間楽しみにしていた映画でした。昨年の国慶節の映画館のチケット販売数から、なんと13.54倍に激増するという回復ぶりを見せました。

映画界は今、選択の時期を迎えています。春節休みは日本のお正月と同じように、多くの映画が公開される時期で、多数の映画が制作されていました。しかし、新型コロナの感染拡大で劇場公開ができなくなり、バイトダンスが映画の上映権を買い取り、中国版Tik Tokなどでのオンライン公開に踏み切ったのです。『ロスト・イン・ロシア』や『クレージー・エイリアン』など、公開された映画は12本にも及びます。すべて無料で見ることができ、Tik Tokを始めとする動画配信アプリの利用者数を大きく伸ばすことになりました。

しかし、この事態に映画業界は危機感を抱きました。もし、新作映画までスマホやタブレット、スマートテレビで見る習慣が定着してしまったら、映画館は死んでしまうからです。『姜子牙』はこのような流れに乗らず、辛抱強く、劇場公開できる時期を待ちました。それがこの大ヒットに結びつきました。

Next: 飲食は“半調理品”の時代へ。ショッピングの変化に日本も追従するか?

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