コロナ禍で起きたサービスの逆転現象
このような休日消費の変化からどのような傾向が見出せるでしょうか。
いろいろな解釈があるかと思いますが、私が感じるのは人と商品、サービスの逆転現象です。人が何かの商品を手に入れたい、サービスを受けたいという場合は、まず、人の方がその商品を販売している場所、サービスを提供している場所まで移動しなければなりませんでした。
しかし、テクノロジーが広がり、もはや観光地でもデリバリーを利用することで、都市と変わらないサービスが受けられるようになっています。人は移動する必要はなく、商品やサービスの方からやってくる移動コスト0の世界になろうとしているのです。
この違いは、商品やサービスを提供する側の意識改革が必要になります。以前は、百貨店はたくさんの商品を揃えて、立地のいいランドマークとなるような目立つ場所で待っていればお客さんがやって来てくれました。ショッピングモールは、家賃は高いものの、何もしなくてもお客さんがやって来てくれました。しかし、数年前からこのような「待ちのビジネス」の不振が目立つようになり、それはコロナ禍で決定的になりました。
今、生き延びているのは、商品やサービスの方からお客さんのところに移動する「攻めのビジネス」です。新小売や到家サービス、ECなどがそれにあたります。人は移動をまったくせず、自宅にいて、街中と同じサービスを受けられるようになっています。移動をするのは、新しい体験、心地よい体験を求めるときだけです。
ここに何かヒントが隠されているのではないでしょうか。
先ほど触れたお土産物屋の例がわかりやすいと思います。観光客は別にお土産物屋に行くために移動をしてきたのではありません。観光スポットでなければ得られない体験をしに移動してきて、そのついでに土産物屋に寄っただけです。なので、珍しい特産品を食べてみたいという体験には興味を惹かれますが、荷物を持って帰るという煩わしいことはしたくありません。
これは日本人も同じです。観光地に行くと、果物や蟹やエビなどの特産物を買いたいとは思うけど、電車できているので持って帰るのは嫌だ。あるいは帰るのは数日後なので、日持ちがしないものを買いたくない。ところが、お店側が「全国発送承ります」と宅配に対応をしてくれていれば、購入して、帰宅日に合わせて発送してもらうという人は多いのではないでしょうか。
少し極端に言うと、人はもう商品やサービスを得るためには移動してくれません。体験を求める時だけ移動をします。それぐらいに考えたほうがいいのではないかと思います。
ということは、商品やサービスしか提供しない路面店というのは、もうお客さんは来ないと考えたほうがいいかと思います。何らかの体験を提供しなければならない。では、どんな体験なら人は移動して来てくれるのか。今、その体験の開発競争が始まろうとしているのだと思います。
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- vol.041:休日消費に起きている変化。キーワードは即時配送、到家サービス、家族(10/12)
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『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2020年10月12日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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