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コロナ後の大型連休はこう変化。中国「国慶節」の消費者動向にヒント=牧野武文

家族旅行が増加、キャンピングカーや民宿が人気

前述の通り、中国人は旅行に対して、あるいは新型コロナの感染拡大に対して、私たちが想像するより慎重なようです。中国では、旅行の季節というのは1月下旬の春節休み、5月頭の労働節の連休、そしてなんと言っても大きいのが国慶節の黄金週間です。毎年1週間の休みがあり、しかも旅行にとっては暑くもなく寒くもなく最もいい季節。紅葉など景観も最も美しい時期です。

今年の春節は、武漢では都市封鎖が行われ、他の都市でも外出制限が行われたため、旅行らしい旅行をする人は皆無といってもいい状況になりました。そして、4月の頭には終息を迎え、5月の連休で旅行が回復するかと思えば、意外に慎重で、都市内の観光地、都市郊外の観光地に日帰りを中心とした短期旅行をする人が多く、しかも、移動手段はマイカー、レンタカーが主流となりました。そのため、高速道路は各地で大渋滞をしましたが、旅行業としては回復とは言えない状況でした。

そして、誰もが期待をしていた国慶節の大型連休で、確かに飛行機や高鉄に乗っての遠距離の旅行が復活をしましたが、先も触れたように慎重な人も多く、力強い回復とはとても言えない状況です。

この国慶節の大型連休で目立ったのは「家族旅行」でした。学生は旅行の制限を受けていることも多く、民間企業でも社員旅行、グループ旅行はしづらい空気があります。そのため、団体旅行が大きく減り、旅行の中心は家族になりました。特に目立つのが小さな子どもを連れた若い夫婦です。

新しい傾向として定着をしたのが、民宿とキャンピングカーです。民宿というのは、観光地にある民家が内装を改造して宿泊できるようにしたものです。多くは歴史のある古民家で、部屋が4つから大きくても10個程度です。中には築何百年の歴史をもつ古民家もあります。普通であれば見学をするような伝統のある民家に泊まることができ、そこで土地の料理をいただくというものです。

子どもを連れて行くのであれば、そういう中国の伝統に触れさせたいと想いもあるでしょうし、もうひとつは、大きなホテルでは人が多く感染リスクが不安、人が多いホテルを避け、静かな民宿でゆったりとしたいなどの理由があるのだと思われます。

旅行予約サイト「飛猪」(フェイジュー)では、民宿の予約数が昨年の国慶節と比べて68%増となりました。また、観光地の入場チケットで親子割引の利用数も昨年から30%増えています。

さらに、キャンピングカーのレンタル数も昨年から77%増えています。これも、親子が多く、人に触れることなく移動して、宿泊したいということなのだと思われます。

民宿やキャンピングカーは、数年前から静かなブームになっていましたが、この国慶節で一気に定着をした印象です。今後も、家族旅行の選択肢のひとつとして定着することになると見られています。

荷物は軽量化、必要なものは現地調達が主流に

もうひとつの大きな変化が、旅行の荷物を減らすという傾向です。

マイカーで旅行する場合はともかく、飛行機や高鉄(中国版新幹線)では、荷物を減らすという傾向が進んでいます。以前は、大型スーツケースに大きなビニールバッグ+リュックというのが定番スタイルでしたが、今では中型スーツケースにリュックになり、若い人たちは、女性は機内持ち込み可能な小型スーツケース+リュック、男性はリュックのみというスタイルもかなり増えてきました。

中国の空港や駅は、ものすごい混雑で、普段の週末から超3密状態になっています。何をするにしても、行列をさせられ、歩かされ、疲れる場所です。そこに大きな荷物を持っていると、動くに動けない状態になります。

なぜ荷物を減らす傾向になっているかというと、多くの人が身軽になる便利さを考えているのだとは思いますが、空港や駅での3密から逃れたいという心理も働いているのではないかと思います。

空港、駅は日本人の感覚からすると巨大な施設で、メインの待合室や改札付近は過密状態になりますが、端のほうにいくと、人がガラガラのカフェや飲食店、誰も座っていない休憩スペースが見つかります。大きな荷物をやめて、身軽になり、3密状態があったら、避けて、人の少ないところに行く。そんな心理が働いているのではないかと思います。

荷物を減らすのはいいことですが、どうしても必要なものはどうするのでしょうか。

その答えは、現地で手に入るものは現地で手に入れることです。例えば、下着や衛生用品、洗顔用品、ベビー用品などです。観光地であっても、今やコンビニはありますし、スーパーがあることもあります。また、ECの即時配送の対応エリアになっていることもあります。

必要なものは現地調達をするというのが基本になっています。これに対して、ウーラマなどの即時配送サービスは、自宅ではなく、宿泊しているホテルに配送するサービスを始めています。観光をしている最中に必要なものに気がついたら、すぐにその場でスマホから注文。ホテルに帰った時にはすでに配達されています。ウーラマのデータによると、観光地での衛生用品とベビー用品の配達数が特に多くなっているということです。

帰りの荷物も増やさないという人が増えているようです。旅行に行けば、特産品などのお土産を買うことになりますが、今の土産物屋は多くが、淘宝網(タオバオ)などのECにも出品をしています。気に入ったお土産を見つけると、その場で買うのではなく、その場でスマホからタオバオにアクセスして、EC注文してしまいます。そうすれば、自分で持って帰る必要はなく、自宅まで配送してくれるからです。

土産物屋のほうでも、積極的にタオバオの店舗を紹介し、そちらに誘導しようとします。その場で買ってもらうと、手に持って帰れる分しか買いませんが、タオバオに誘導すると大量に買ってくれたり、ついでに他のものも買ってくれるお客がいるからです。

タオバオと天猫(Tmall)のデータによると、国慶節期間、ウイグルの焼きビーフンが72%、湖南のアヒルの味噌漬けが52%、四川のウサギの頭が34%も昨年と比べて売上が増加しました。多くが自宅からではなく、現地からの注文だったそうです。

Next: 観光地の行列は消滅。スマホでのチケット購入・入場予約が常識に

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