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相続こそ「印鑑廃止」の聖域。押印を省略すべきではない合理的な理由=池邉和美

相続の押印は事情が違う

一方、遺産分割協議書への押印は、これとは事情が異なります。

遺産分割協議は、大前提として、共同相続人全員で行なわない限り、無効です。

また、仮に認印で手続きができたり、印鑑そのものが不要となったりすれば、一部の相続人が遺産分割協議書を偽造することが容易になってしまいますし、さらに、金融機関などの手続き先にとっても、提出された遺産分割協議書が偽造かどうかの判断が、非常に大変になってしまいます。

つまり、遺産分割協議書においては、本当に「その本人が、本人の意思で捺印した」ということが、非常に重要なのです。

そのため、通常は認印では手続きはできず、「実印」での捺印+印鑑証明書の添付が求められています。

このように、本人の意思を担保する意味合いで捺印を求めている書類、すなわち、実印での捺印+印鑑証明書が求められている書類については、原則として、当面は印鑑の廃止はされないと考えた方が良いでしょう。

電子署名が普及するまでは印鑑必須

なお、「当面は」というのは、仮に将来、電子署名を多くの人が使いこなせるようになれば、その電子の署名が印鑑証明と同じ役割になりますので、紙への押印から電子での署名に移行する可能性は充分考えられる、という意味合いです。

ただ、マイナンバーカードさえ普及していない現状ですから、ここ数年では難しいのではないでしょうか。

いずれにしても、遺産分割協議書など、相続手続きに必要な書類への押印は、いま進んでいる改革の中では、廃止されないと考えて良いかと思います。

連日、印鑑廃止のニュースを聞いていると、すべての手続きで印鑑がなくなる、と思ってしまいがちですが、遺産分割協議書など、重要な書類の押印までなくなるわけではありませんので、誤解の無いようにしておかれると良いでしょう。

image by:mapo_japan / Shutterstock.com

こころをつなぐ、相続のハナシ』(2020年10月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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愛知県の行政書士山田和美が、相続・遺言について情報を発信するメールマガジンです。ご家族が亡くなる、ご自身の相続に備えて準備をする。そういった経験は多くの場合、一生に数える程しかありません。だからこそ実際に直面したとき、何から手を付けて良いかわからず戸惑ってしまったり、知らなかったが故に不利益を被ってしまう事が多々あります。このメルマガでは、「相続人って誰のこと?」という基本的な事から、「相続が起きると銀行口座どうなるの?」等のより実務的な疑問まで幅広くお伝えして参ります。

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