中小企業再編の明暗
さらに危険性をはらんでいるのが、政府の成長戦略の中に中小企業の再編・合理化が入っていることです。
その考えの背景には、政府が会議の委員に任命したデイビッド・アトキンソン氏(元ゴールドマン・サックス社のエコノミスト)の存在があります。彼は日本の中小零細企業の中に多くの「ゾンビ企業」があり、これが日本経済の効率を抑圧する「がん」だとの考えを持っています。
菅総理は彼を重用し、頻繁にアドバイスを受けていると言います。それが中小企業の再編という考えにつながっています。効率の悪い中小零細企業は整理淘汰しようということです。
経済が成長し、市場が拡大しているときなら、その痛みも吸収しやすいのですが、コロナ禍で経済が痛んでいるときにこれを進めると、会社の廃業、倒産を通じて多くの失業者を発生させます。
現在の日本経済では、こうしてはじき出された人々の受け皿は限られます。誰もが運送業や介護職などに移れるわけではありません。日本経済の強さ、危機に強い体質は、柔軟な中小零細企業の存在を抜きには語れません。日本の大企業には「ゾンビ社員」がいても、中小零細企業の「ゾンビ企業」は、いくら金融緩和状態と言っても、そもそも何年も存続できません。
思い込みで「ゾンビ企業」の整理淘汰を進めようとすると、不必要な血を流すことになりかねません。中小企業には独自の技術を持ったところも多く、再編になじまないものも少なくありません。
中小企業再編を進める場合は、慎重さが求められます。
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『マンさんの経済あらかると』(2020年11月13日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。