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上昇相場はいつ終わる?金融緩和の転換点は「物価上昇率」で見極めろ=栫井駿介

コロナ下で日経平均は29年ぶりの高値圏に到達しました。株価を押し上げる根本的な原因になっているのが、金融緩和であることは間違いありません。この金融相場はいつ終わるのでしょうか?私たち投資家が注目すべきは「物価上昇率」です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

金融緩和が株価を押し上げる

株価が上昇を続けています。日経平均株価はバブル崩壊後の高値を更新、ダウ平均は史上初の3万ドルを超え、ナスダックは最高値をなお更新中です。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

株価を押し上げる根本的な原因になっているのが、金融緩和であることは間違いありません。企業業績が大きく上向かなくても金融緩和によって株価が上がるのは、以下の公式によって説明できます。

PER=1/(r-g)
※r=金利+リスク、g=永続成長率

金利が下がると「r」が下がって分母が小さくなりますから、PERは上昇します。今はどの国も「ゼロ~マイナス金利」ですから、分母は過去に例を見ないほど小さくなっているのです。

この状況下で「リスクの小さい企業」や「成長率の高い企業」のPERは限りなく上昇します。分母がゼロに近づけば、PERは無限大に発散するのです。したがって、金融緩和が長引けば長引くほど、株価にはまだまだ上昇余地があることになります。

だからこそ、多くの投資家はこの金融緩和がいつまでも続くことを望んでいます。FRBは少なくとも2023年末までゼロ金利を続ける方針を表明しています。これはコロナが終わろうと、終わるまいと、そのような方向になりそうです。

金融緩和は、金融商品の値上がりはもとより、実体経済にもお金を回すことを目的とします。こうして経済が元気になれば、多くの人はハッピーになれるでしょう。

日本が実験場「MMT」の考え方とその限界

金融緩和と財政拡大を続けることでお金をジャブジャブ回し続ければ、みんなハッピーであり続けられる――こう考えたのが、昨今の経済学で話題になっているMMT(Modern Monetary Theory)です。

かつては馬鹿げた理論とされていましたが、近年は「まともな」学者でこの考えに傾倒する人も少なくなくなってきました。

この理論の拠り所となっているのが、日本経済の状況です。日本では、1995年以降長年にわたってほぼ「ゼロ金利」が継続し、同時に国債残高を世界最大級まで増加させてきました。

いわば、MMTを実践してきたのです。

お金を配り続けることの最大の弊害はインフレです。従来の理論ではこれが大きいがために、むやみな金融緩和は慎むべきだとされてきました。

第一次世界大戦後のドイツや世界恐慌後の日本でも国債増発によるインフレに苦しみました。

ところが、近年の日本ではいくら金融緩和と国債増発を行っても、インフレどころかデフレを脱却するのがやっとというところです。これを見た学者が「うまくやれば大丈夫じゃないか」と考えるようになったのです。

MMT論者も、インフレを無視しているわけではありません。その証拠に、彼らの枕詞にはいつも「インフレが起きなければ」と付きます。要はここがすべてなのです。

Next: 「持つもの」と「持たざるもの」の分断が加速。インフレの弊害とは

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