現在ダイキンの株価は直近1年で20%ほど下げており、2023年のピークから見ると50%近くも下落している状況です。このことから「ダイキンの株を保有しているけど今後株価がどうなるのか知りたい」という投資家の声をよく耳にしています。結論からいうと、現在大きく下落していますが、超長期投資の目線でみると大きな問題はないと言えます。それでも、ダイキンの株価がなぜ下がっているのか気になっている人も多いようです。そこで今回はつばめ投資顧問が、ダイキンの今後についてや株価下落の背景を徹底分析します。ぜひ最後までご覧ください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
ダイキンの事業内容
ダイキンの事業内容は、空調事業が中心です。
エアコンを主体とした空調機器と、物を冷やすための冷凍機なども製造しています。
売上の91%、利益の約85%が空調・冷凍機部門から来ており、関連事業として化学事業も行っています。
ダイキンは大阪に本社を置く企業ですが、特に注目すべき特徴はグローバル性です。
海外での売上が全体の83%を占め、主な市場はアメリカ、ヨーロッパ、日本の順となっています。
世界中に空調機器を販売する企業であり、販売実績と売上は世界一です。
ダイキンの業績
2025年3月期の予想では過去最高の売上と利益を達成する見込みであり、営業利益の進捗も第3四半期時点で75%まで来ています。
業績を見る限り現状は順調に見えますが、もう少し細かく見てみましょう。
ダイキンの主力である空調事業の地域別売上高を見ても、2025年3月期の予想では過去最高を更新する予定です。
第3四半期時点での実績は欧州だけがやや遅れていますが、全体として目標の75%に対して80%台の進捗が多く数字上では悪いとは言えない状況です。
なぜダイキンの株価は下がっている?
冒頭でも紹介しましたが、ダイキンの株価は直近1年で約20%下落しています。
ここでは、業績が悪いとは言えないダイキンがなぜここまで株価を下げているのかを解説します。
株価が下落している理由は、欧州と米国の足元の販売状況が悪いことにあります。
それぞれみていきましょう。
<欧州の販売状況>
欧州の販売状況を見ると、2024年度の予想では住宅用エアコンの需要が前年比で20%ほど増加すると見込まれていました。
しかしながら、第3四半期時点では前年比で0%と横ばいとなっています。
また、環境に配慮した空調であるヒートポンプ暖房は、前年比で14%ほど伸びると予測されていましたが、実際にはマイナス16%までしか回復していません。
このように、年間の予想に対して進捗が思わしくない状況です。
売上自体は良好ですが、最近の販売状況が良くないことから株価は下落していると考えられます。
販売成績が低迷しているにもかかわらず売上は良好と矛盾していますが、これは為替の影響によるものです。
つまり、現在は円安メリットを受けているため実質的な業績以上に良く見えている状況です。
<アメリカの販売状況>
住宅向け空調が7%増の予想に対して、実績はマイナス4%です。
また業務用のマルチエアコンが12%増の予想に対して、足元ではマイナス2%という好ましくない状況になっています。
ここまでをまとめると、業績自体は一見悪く見えませんがそれは円安の恩恵を受けているからであり実際の販売状況は良くありません。
投資家は、この流れを見て先行きを心配している状況です。