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高齢者いじめの「医療費2割負担」で若者の負担は減らず、社会保障は崩壊へ=矢口新

「歪んだ税制」を先に正すべき

私はこうしたことは単なる弱者いじめの小手先の手段に過ぎず、健康保険制度や社会保障制度の維持にはほとんど役立たないと見ている。

諸悪の根源は経済を悪化させる上に、税収増も望めないという「歪んだ税制」だ。税収増なしに社会保障制度の維持ができるはずもない。

日本の税収が60兆円を超えたのが、1990年度と2018年度の2回しかないという、収入が足りないままで30年も過ごせば、追い詰められるのは自明の理だと言えるのだ。

それでは、上記の年間所得200万円というのは多いのか少ないのか、負担増の対象者は一部に過ぎないのかどうか、連載中の「日本の社会保障制度の崩壊はこうして防ぐ」から、最も該当する項目を1つ取り上げる。

崩壊前夜の社会保障制度

下図は、2008年度からの被保険者1人当たりの医療費の推移だ。

国民健康保険被保険者1人当たり医療費(出典:e-Statの資料から作成)

国民健康保険被保険者1人当たり医療費(出典:e-Statの資料から作成)

これで見ると、被保険者1人当たりの医療費は着実に上昇していて、2018年度(平成30年度)には35万2,917円となった。このうち国民健康保険が、給付率83.2%の29万3,627円を負担していることになるので、患者負担は1人当たり平均で5万9,290円だということが分かる。

日本には国民健康保険のほかに、会社に勤める従業員や事業者が加入する健康保険がある。健康保険はさらに「組合けんぽ」と「協会けんぽ」に分かれている。

組合けんぽは、大企業などが社内向けに独自の健康保険組合を設立するもので、その企業の従業員や事業者が加入できる。一方、中小企業の従業員は健康保険協会の運営する協会けんぽに加入することが一般的だ。

2020年11月5日、大企業などが運営する健康保険組合連合会「組合けんぽ」が今後3年間の収支見通しを発表した。解散が多発する水準まで保険料率が上昇する時期が、これまで想定していた2022年度より、コロナ禍により1年早まり、21年度になると試算した。

見通しによると、全国約1,400の健保組合の合計で保険料収入は19年度の8兆2,000億円から、20年度は7兆9,000億円に、21年度と22年度は7兆6,000億円に減少するという。企業業績の悪化で賃金が低下し、企業や従業員が納める保険料が減少するためだ。

一方、患者の受診控えが徐々に解消することで医療費の支出は増え、収支が悪化すると見込んだ。

21年度は6,700億円の赤字見通しで、収支均衡に必要な保険料率は10.22%と、解散危機の目安である10%を超える。10%は全国健康保険協会「協会けんぽ」の料率のため、企業が自前で健保組合を持つ利点が損なわれるのだ。

このことが示唆しているのは、民営・官営を問わず、健康保険制度の維持が困難になってきていることだ。

Next: 健康保険制度の維持は困難。すでに年金減額も医療保険の負担増も限界

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