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円安こそ日本再興の道。1ドル360円時代に経済成長、1989年以降の円高で国力を落とした日本経済史=山崎和邦

ファンダメンタル要素を無視して、日本政府は相場介入したが、完全なる無駄に終わった。そもそも望ましい為替レートは何円なのだろうか?日本の経済史を振り返ると1ドル360円時代に高度成長し、1989年以降、円高となって国力を落としたというのが歴史的事実だ。円安は日本にとって基本的に望ましいものなのだ。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2022年10月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。

プロフィール:山崎和邦(やまざき かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴61年、前半は野村証券で投資家の資金を運用する「セルサイド」、後半は自己資金で金融運用する「バイサイド」、晩年は現役研究者と、3つの立場で語ることを信条とする。2022年85歳で国際コミュニケーション学博士号を取得。

円安が適度かどうかを決めるのは総理や蔵相ではない

このことは9月22日の運命の合致日での介入時から本稿で言い続けたが、案の定、先週は9月の物価高が予想を上回り、円売りドル買いに弾みがついた。

円ドル為替市場は当該国の貿易収支と、目先的には金利差がファンダメンタル要素として大きいが、それらをそのままにして、むしろ意図的に金利差を大きくしたまま「超緩和維持」してきた結果、先週は遂に9月22日の相場操縦日を超えて32年ぶりに147円台をつけた。

岸田総理も鈴木財務相も、投機を旨とした「行き過ぎた円安」は望ましくないと言い、口先介入に務めたが、効き目は薄いか無いかであろう。投機筋の動きとはそういうものだ。それを知っているのは相場師で策士の日銀総裁であろう。「行き過ぎた円安」か「適度の円安」か、総理や蔵相が決めるものではない。

問題はファンダメンタル。相場操縦では円安は止められない

日本政府が24年前に史上最大の為替介入に入ったのは1998年9月22日だった。そして今年の9月22日に逆の方向へ為替介入に入った。

日米の金利差というファンダメンタル要素はそのままにしておいて、相場操縦だけで円ドル為替を変えようとした。しかし、絶対的なファンダメンタルには手を付けずに、むしろ頑なにそれを守り、相場操縦だけで円ドル相場の居所を変えようとするのは無理があると筆者は当初から考えていた。やはり、為替介入(相場操縦)に入った瞬間こそ一時的に円高に振れたが、すぐにまた元に戻る勢いである。

主要国で唯一、マイナス金利政策を継続しているのは日銀だけだ。日銀は、この政策を国内経済や物価情勢に沿ったものであると説明している。したがって、日本では金融政策の自由度は失われていないぞということを、別の言葉で表現していることになる。

望ましい為替レートはいくら?「悪い円安論」「良い円安論」

どのレベルが望ましい為替レートであるのか、何が正常なレートなのか、こういうことを議論なしに、何年ぶりの円高だからとか、何年ぶりの円安だからという議論が極めて多い。国民経済全体の物差しで測った時に、何が正常か、何が望ましいかを最初にきちんと議論しておく必要がある。

この議論なしに「良い円安だ、悪い円安だ」と議論してもあまり意味がない。何を基準にして「行き過ぎた円安」「行き過ぎた円高」なのかが曖昧である。

何が望ましいのか。

高度成長期と言われた1955年~1973年辺りの18年間(1955年~1973年)のうちの16年間は、円ドルレートは1ドル360円の固定相場制だった。この時に、日本経済は最も勢いよく成長した。GDPは7年間で2倍になった。成長は一部分では副作用を生むが、今の日本にとって何よりも成長が重要である。

高度成長期の円ドル相場が最高だった。つまり360円だという理屈も成り立たないことはない。そして、円高の時に日本経済の成長は疎外されたのだ。

これは1989年末に三重野康が日銀総裁に就任した頃から、95年の阪神淡路大震災を経て、2011年の東日本大震災を経て、2012年の安倍政権成立時までが円高時代と言える。この時代に日本は経済大国の座を失いそうになった。それを「経済を取り戻す」と叫んで出たのが、アベノミクスである。そういうことから言えば、円安こそ日本のためになると言える。これが一貫した筆者の持論ではあった。

Next: 日米金利差がある限り、ドル円は120円を割ることはない

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