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景気変動に耐性「信越化学」は買いか?最新決算で見えた真の企業価値、長期投資家が持つべき視点とは=元村浩之

今回は、信越化学<4063>の最新決算について、その内容を深く掘り下げていきたいと思います。

今回の決算発表を受けて、「業績は良かったのか、悪かったのか?」「日本の化学メーカーを代表する信越化学から、現在の景気の動向はどう見えるのか?」「信越化学の真の強みとは?」「株価は現在、割安と言えるのか?」といった多くの疑問が寄せられています。これらの疑問について詳しく解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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信越化学の最新決算:「悪くはない」の真意

今回の信越化学の第1四半期決算は、一部で「悪い」との見方も出ていますが、私は「良くはないが、信越化学が悪いわけではない」と評価しています。

具体的に見ていきましょう。

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出典:信越化学 決算短信

第1四半期の売上高は前年同期比で5%増加したものの、営業利益は13%の減少となりました。この利益減少の主な要因は二つあります。一つは「為替の悪影響」、もう一つは「市況の悪化」であり、それぞれが同程度の割合で利益を押し下げたと考えられます。

信越化学は輸出や海外生産が多いため、円安はプラスに、円高はマイナスに作用します。足元では約11円程度の円高ドル安が進んでおり、これが利益に大きく影響しています。

また、市況の悪化による影響も顕著で、特に「生活環境基盤材料」セグメントの売上高が前年比で22%も下落しました。このセグメントの主要製品は塩化ビニル樹脂です。塩化ビニル樹脂は、住宅や建築物に使われる配管などに利用されるため、その業績は米国住宅市場の動向に大きく左右されます。足元では、この米国住宅市場の状況が芳しくないことが、今回の決算に影響を及ぼしました。

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出典:信越化学 決算短信

米国住宅市場の動向が示す景気悪化の兆候

信越化学の塩化ビニル樹脂の業績悪化は、米国住宅市場の低迷と密接に関連しています。米国では、住宅市場指数が50を下回ると悪化と判断されますが、足元ではこの指数が大きく下落しています。

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出典:Investing.com

これは、トランプ政権時の関税政策によって、住宅建設に必要な建材や木材の価格がさらに上昇するとの見方が広がり、住宅を建てにくい状況が続いているためです。

現在、米国住宅着工件数はまだ大きく減少しているわけではありませんが、大手証券会社などでは今後減少するとの予測が多く出されています。住宅市場指数は「マインド」を示す先行指標であり、これが悪化すると、実際の「住宅着工件数」にも影響が出てくる可能性が高いと分析されています。

信越化学が提供する塩化ビニル樹脂は最終製品の素材であるため、マインドの悪化は最終製品メーカーからの発注を抑制させ、信越化学の業績にも先行して現れることがあります。そのため、今回の決算は、米国経済、少なくとも住宅分野においては今後悪化していく兆候を示していると捉えることができます。

さらに、市況悪化の背景には中国の不動産不況も挙げられます。中国での塩化ビニル樹脂の需要が減少したことで、中国メーカーが製品を他国へ輸出しようとする動きがあり、これが米国での塩化ビニル樹脂の取引価格に影響を与え始めています。つまり、需要の減少と供給の増加が同時に起こり、価格競争による「値崩れ」を引き起こす可能性があり、まさに「シクリカル銘柄(景気変動リスク)」としての側面が強まっていると言えるでしょう。

Next: なぜ景気変動に強い?信越化学の「強み」とは

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