現在、株式市場ではAI関連銘柄ばかりが急騰し、「AIがバブルなのではないか」という議論が盛んに交わされています。その中で、AIブームの頂点に君臨するNVIDIA(エヌビディア)が先日決算を発表しました。今回は、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOの強気のコメントを分析し、現在のAI市場がどのような状況にあるのか、そして投資家がどのように考えるべきかについて、解説したいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
AI市場の牽引役:NVIDIAと関連銘柄の動向
現在、株式市場、特にAI分野ではAI関連銘柄への資金集中が進んでいます。日本国内では、ソフトバンクグループ、NVIDIAと関連の深いアドバンテスト、そして半導体分野の東京エレクトロンといった企業の株価が大きく上昇しています。
アメリカ市場においては、NVIDIAが相場を牽引しています。AIを稼働させるためには半導体が必要であり、半導体銘柄が盛り上がる中で、NVIDIAはその頂点に位置しています。NVIDIAは単に半導体を製造・供給するだけでなく、AI開発のためのプラットフォーム(CUDAなど)やシステムも提供しており、AI分野をトップで押さえている企業です。
ファンCEOは、今回決算で「産業革命の入り口」であるという捉え方ができる、と発言しています。もしこれが産業革命の入り口であれば、現在の株価上昇はまだ序の口に過ぎず、これからさらに大きく上がっていく可能性が見えます。

NVIDIA CORP<NVDA> 週足(SBI証券提供)
好業績の裏側:ITバブルとの大きな違い
NVIDIAの業績は非常に好調で、過去に例を見ないほどの好調な決算となっています。これは、今や世界最大の時価総額を持つ会社で起きている「とんでもないこと」です。売上高は前年同期比で約100%、つまり2倍近くに伸びており、利益も同様に伸びています。
このAIブームは、過去のインターネットバブル(ドットコムバブル)とは一線を画す側面があります。ドットコムバブル期には、利益どころか売上さえ立っていない企業に高い時価総額が付くというおかしな状況がありましたが、NVIDIAに関しては利益をしっかり出しています。周囲の半導体銘柄についても、大きな利益を出して伸び続けている点が、ITバブルとの大きな違いです。
ジェンスン・ファンCEOが示すAI経済の未来(3つの強気な根拠)
株式市場の一部では、AIブームの終焉や胡散臭さが指摘される一方、ファンCEOは引き続き強気な姿勢を見せています。その根拠として、以下の3点が挙げられます。
- 新型半導体「Blackwell」への異常な需要
- AIの進化:「ツール」から「労働力(レイバー)」へ
- 次の波:物理AIとロボティクス(重工業への応用)
NVIDIAが開発している新しい高性能半導体「ブラックウェル(Blackwell)」に対する需要は、「もはや異常(インクレディブル)なレベルにある」とCEOは述べています。ブラックウェルは非常に高価(数千万クラス)ですが、それでも買い求める人が後を絶たず、需要に追いつけていない状況です。この導入により、AI自体がものすごくスケールアップすると見られており、「まだまだAI革命は進行する」というCEOのメッセージが込められています。
現在のAIは進化し、単なるチャットボットのように質問に答えるだけでなく、AI自らが色々と考えて答えを出すようになっています。
・推論需要の爆発:質問者の意図を推測し、複雑な回答を導き出す「推論」の需要が爆発的に増えています。
・使用量連動の収益モデル:従来のような定額使い放題モデルから、複雑なAIの利用が増えることで、使用量に応じた従量課金モデル(クレジット制など)が増加しており、AIによるマネタイズが可能になりつつあると示唆されています。
・AIは労働力: AIはもはや単なるツールではなく、人間のやっていることを置き換える「デジタル従業員」「労働力(レイバー)」であるとCEOは主張しており、その置き換えによって十分に採算が合うとしています。
ファンCEOは、「物理AIとロボティクスが次なる波(Physical AI&Robotics are the next Wave of Heavy Industries)」となると指摘しています。AIが従来のプログラム通りに動くロボットではなく、微妙な形状の違いなどにも対応できるようになることで、生産現場などの重工業におけるAIの市場がさらに広がると見られています。
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