株式会社リブ・コンサルティング(480A)のグロース上場を記念した記者会見が行われ、代表取締役の関厳氏と取締役CFOの中川貴裕氏が記者からの質問に答えました。
株式会社リブ・コンサルティング
設立:2012年7月
事業内容:総合経営コンサルティング業務、DXコンサルティング業務
登壇者名
株式会社リブ・コンサルティング 代表取締役 関厳 氏
株式会社リブ・コンサルティング 取締役CFO 中川貴裕 氏
質疑応答:初値の受け止めについて
質問者:本日の初値は1,400円ということで、公開価格を40パーセントほど上回りましたが、その受け止めについてお聞かせください。
関厳氏(以下、関):初値に関しては、まずしっかりと値段がついてほっとしています。また、一定高く評価していただいているのは非常にありがたいと思います。ただ、今後も企業価値を向上させていくのが私たちの仕事ですので、それは継続していきたいと思っています。
質疑応答:競合他社との差別化について
質問者:ビジネスコンサルということで、Big4やアクセンチュアなどと人材獲得もしくは顧客獲得で一部重なっているところがあると思います。今後御社が成長していくにつれて、そのような外資系企業とライバルになることも想定されると思いますが、どのように差別化・対抗していくのか教えてください。
関:アクセンチュアはIT領域が強いためそれほどバッティングしませんが、Big4やBCGなどとはぶつかってきています。事業面においては、「クロスポイント」が私たちにしかできない領域だと思います。当然、大企業と競合するのですが、外資に頼むメリットは海外の事例を知れることです。
しかし、今は海外の事例だけでなく、日本の新規事業の成功例としてのベンチャーや、地方の拠点をどうするかという議論もかなり出てきています。私たちがクロスポイントで取れる地方やベンチャーのナレッジは、わかりやすく差別化が効いています。
また、人材の取り合いで負けると成り立ちませんので、条件面に関しては私たちももう少し上げていかなければいけません。しかし、若手でも実力があればどんどん責任ある立場を任せていけるというベンチャーならではの良さを当社はまだ維持しています。そのようなところで最終的に当社を選んでくれるのではないかと思います。
新卒や若手の方は今すでにそのような点で選んでくれていますので、それをさらに磨き上げていきます。
質疑応答:IT・DX・AI分野の成長戦略について
質問者:成長戦略についてうかがいます。今後、IT・DX・AIの分野に注力していくと思います。今回、アドバイザーにデータサイエンティストの宮田裕章さんもいらっしゃいますが、どのような戦略を考えているのか教えてください。
関:私たちは生成AIを企業に実装していく、あるいはそれを組み込んでいくところはIT・DXコンサルで見ています。一方で、生成AIに関してどのような使い方をしていくかという、いわゆるDX戦略のような流れで考えるのは、ビジネスコンサルティング側でカウントしており、すでにかなりの数をこなしています。
宮田先生にアドバイザーになってもらったのは3年くらい前です。宮田先生はテクノロジーとデータに詳しいため、企業がどのような方向に進むべきかというところについていろいろ意見交換しながら、私たちもその領域の仕事はすでにかなり取り込んでいます。
一方で、今後そのようなITプロジェクトをマネジメントしたり実装したりしていくには、単純に私たちに人材が足りない部分があります。実際に今Preferred Networksとも連携していますが、そのようなテクノロジー領域に強い会社とM&Aや外部連携していくことで、自社の採用以外のところでもどんどん顧客を取り込めるような動きをしていこうと思っています。
質疑応答:採用計画について
質問者:従業員数についてですが、先ほどコンサルタントの数が売上の成長に直結するというお話がありました。前期は313人、足元は337人ということで、近年は20人から30人ずつくらい増やされてきたのかと思います。今後の採用数・従業員数と、コンサルタントをどのように増やしていくお考えなのか教えてください。
関:売上高を20パーセント前後上げていくことを考えると、コンサルタント数も同じく20パーセント前後の増加が必要だと思います。離職率は15パーセントから20パーセントの間で想定していますので、35パーセント前後は採用していかなくてはいけません。
コンサルタント数は現在200人弱くらいです。それに対して、新卒と中途、未経験者と経験者を合わせて35パーセントくらいは採用していかなければいけないという計画をしています。
一方で、1人あたりの売上高もまだ上げられるステージにあり、それが利益率向上の1つのキーにもなっています。この2年から3年はそれに取り組んできました。したがって、コンサルタントを15パーセント増員し、1人あたりの売上高を5パーセント増加することで、売上高を20パーセント増やしていくことをベースにしています。そのようなことも考えながら採用を進めている状況で、そのくらいの人数はおそらく採用できると思います。
質疑応答:離職率低下と生産性向上について
質問者:もともとコンサルティング業界は離職率が高いですが、それでも15パーセントから20パーセントはかなり高いと思います。若いうちに御社に入れば、短い修行期間の後どんどん仕事を任せてもらえるということで、力をつけてある程度成長したら転職してしまうということも起きると思うのですが、離職率低下についてどのようにお考えでしょうか?
また、御社は基本的に中小企業がメインですが、大きな会社の案件を取れば1人あたりの売上高も向上すると思います。このあたりの配分はどのように考えていますか?
関氏:まず離職率に関してですが、最近はITコンサルタントで大量採用することで分母が大きくなるため、コンサルティング業界全体の離職率が低く見えることがあります。しかし、ビジネスコンサルタントはずっと15パーセントから20パーセントくらいです。
ただ、私たち自身が離職率を下げる努力も当然できます。例えば離職率が15パーセント程度とはいえ、すぐに辞めてしまう方とかなり長く定着する方に二極化しています。当社は新卒の比率が上がるほど離職率が下がる傾向にありますので、そのようなことにきちんと取り組んでいく必要があると思います。
顧客については、今までの流れとして、中堅・中小企業であっても人が辞めてもお客さまは残る傾向にあります。今回の上場によって、より「会社とお付き合いしている」という雰囲気になりますので落ち着きやすいとは思います。
一方で、今回の信用力向上によって大企業の案件がさらに伸びることは間違いないと思います。現在は35パーセントくらいが大企業ですが、今後は大企業と中堅・ベンチャーを足して50対50くらいになっていくと見ています。
質問者:コンサルタント1人あたりの売上高の向上余地はあるというお話でしたが、これは何が理由でしょうか?
関氏:1人あたりの売上高を上げる方法は2つあります。1つは、当社が毎年単価を上げていくことです。コンサルティングビジネスは外資のビジネスですので、毎年同じランクのコンサルタントの値段が上がります。当社は4パーセントから5パーセントほど上げています。
もう1つは稼働率です。受注が伸びていくと空き人員が減っていきますので、1人あたりの売上高が増えます。こちらはもう少し上げられると思いますので、その2つの組み合わせで考えています。それにより今年は8パーセントくらい上がっています。
質疑応答:コンサルティング市場の成長性について

質問者:今後の成長政略に関するご説明の中で、市場の年平均成長率は10パーセントだとおっしゃっていましたが、目論見書等を見ると4.7パーセントとなっています。こちらの定義の違いは何でしょうか?
関:4.7パーセントはコダワリ・ビジネス・コンサルティングが2023年に出した2030年までの予測数字です。2024年の実績としては9パーセントから10パーセント伸びており、それが続いています。
また、私は5年ほど前から独自にコンサルティング会社の社員数を追っているのですが、そちらでも明らかに10パーセントほど増えています。人的リソースで行うビジネスですので間違いなく伸びています。
さらに、まったく違う観点で言うと、実は主要ファームの売上が伸びていなかったとしても、NECや富士通などがコンサルティングサービス領域の売上を伸ばしていますので、業界としてはかなり伸びています。富士通はコンサルタントを1万人採用すると言っていますし、リサーチ会社の数字の取り方が私たちの実感値とは異なっているのが実情です。
質問者:国内ビジネスコンサルティング市場について、最近IDC Japanは7,900億円という数字を出していますが、御社の算出する約2.8兆円は、何を含めて何を含めていないのでしょうか?
関氏:IDC Japanに対して、当社はIT・DXコンサルティングを含めているところが一番の違いだと思います。さらに他のファームが算出するクラウドやIBMの売上などを合算する方法では10兆円になります。大きく分けると、約7,000億円という算出方法と、私たちのような2兆円から3兆円、10兆円に近い算出方法の3つがあると理解しています。
質疑応答:資本政策について
質問者:資本政策についてですが、経営陣で7割以上の株式を持っています。外部資本はどのように活用していくのでしょうか? 活用しないと上場する意味がないと思うのですが、このあたりの考え方を教えてください。
中川貴裕氏(以下、中川):もちろん私たちは今後成長投資を優先していく計画をしています。成長投資にあたって資金調達が必要な時は、フォローオン・エクイティも含めて資本の部分での調達も考えていますので、それによって株主構成は今後もある程度変わっていくと捉えています。ただ、具体的な計画はまだ立てていない状況です。
質問者:分割や流動性の必要性についてはいかがでしょうか?
中川:現時点では必要ないと思っていますが、将来的に必要であれば検討する所存です。
質疑応答:景気後退時の事業への影響について
質問者:コンサルティング業界は景気後退時に逆風を受けやすいと思います。特に御社は中堅・中小企業やベンチャーが多いため、より逆風を受けやすいと思いますが、いかがでしょうか?
関:私は前職でリーマンショックの際に営業責任者でしたので、不景気により何が起きるかということは把握しています。今ほどの成長は難しいかもしれませんが、一時的な落ち込みは小さく、すぐ回復すると思っています。
コンサルティングビジネスは、「すでに社員がいるところに対して作戦を立てに行く仕事」から、「社員が足りないところを高級代替する」業態になっていますので、コンサルティングビジネスがなければ、企業側が運営できません。
昔はコンサルティングは使っても使わなくてもよいという贅沢品のような立ち位置でしたが、今は使わないと部署が回らず必要経費に近くなっています。当社はこのようなビジネスをしていますので、当然ながら一時的には落ち込むかもしれませんが、そこまで長くは影響を受けないというのが大きな違いだと思います。
また、企業の規模で言うと、大企業や中堅企業はそこまで影響を受けませんが、ベンチャーは落ち込むと思います。そこまで大きくはない会社が資金調達してコンサルティングを使っており、まだ贅沢遣いという面もあるからです。
ただ、業界としてはそのようなかたちですが、私たちはその時余ったコンサルタントを違う案件に割り当てればいいだけですので、あまり関係ありません。したがって、影響も受けづらいと思っています。
質疑応答:株主還元の方針について
質問者:基本的には設備投資が不要な業態ではありますが、M&Aもお考えだと思いますので、そのための成長資金を確保する必要もあると思います。それを踏まえて株主還元に対する考え方をお聞かせください。
中川:繰り返しになりますが、当面は人材採用や人材育成を含めた成長投資やM&A戦略にフォーカスしていきたいと思っています。ただ、将来的にはもちろん株主還元策も検討していかなければいけませんので視野には入れています。
質問者:当面は無配で成長投資を優先するという理解でよろしいでしょうか?
中川:そのような理解でけっこうです。
質疑応答:ITコンサル領域における競合について
質問者:最近はベイカレント・コンサルティングから派生した会社の上場も増えています。ITコンサルに特化した会社とはどのように戦っていくのでしょうか?
関:私たちの売上の85パーセントを占めるビジネスコンサルとは、顧客も人材もほとんどバッティングしたことがありません。ターゲットとしている市場がまったく異なると思います。彼らは情報システム部門を、私たちは経営企画と事業企画を対象にしていますので、ぶつからないまま伸ばしていけるという実感があります。
ただ、IT・DXの領域にM&Aを含めて参入した時には、必ずバッティングが発生します。一方で、市場自体が非常に伸びているため、当社が本業の事業企画で成功した事例を情報システム部門に提案する場合、顧客を奪い合うこともなく一定数は獲得できると思います。実際、手応えも感じています。
質疑応答:生成AIの事業への影響について
質問者:生成AIの広がりによって御社のビジネスにはどのような影響があるのでしょうか? ポジティブな影響、ネガティブな影響があれば教えてください。
関:まず、生成AIでコンサルティングの仕事がなくなるかどうかという問題ですが、生成AI導入の仕事はとんでもない量ですので、3年間は間違いなく増える可能性のほうが高いです。
3年間はどのコンサル会社もその果実を得られて伸ばしていくと思いますが、私たちはその後も有利だと思っています。導入が進みすぎたためにコンサルタントが切られるケースは、導入に投資した大企業から進むと思います。
したがって、私たちが取り組んでいる中堅・中小企業が生成AIによって業務効率化され、コンサルタントを使わなくても良いという状態は、10年、20年経ってもなかなか来ないと思います。そうなった際は主軸をそちら側に移せばいいと思っていますので、業界としても短中期的にはプラスですし、私たちにとっては中長期的にもプラスだと思います。
社内の生成AIによる業務効率化度合いはとんでもないレベル感になっています。労働時間も非常に短くなってきており、長時間労働の印象が強いコンサルタントが相当早く退勤できるようになっています。したがって、今後も若い方からの業界人気は続きやすくなると思います。
議事録や資料作成の一部、リサーチやインタビュー内容のまとめなども、8割から9割は生成AIで行っており、かなり効率化しています。コンサルティング会社がそれを開示してしまうとフィーを下げられるためあまり公表はしませんが、みなさま高いレベルで効率化していますので、しばらくは良い流れが続くと思います。
