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米国発「カネ余り相場の終わり」は、さらなる貧富の格差拡大を招くか?=矢口新

主要国の多くが金融引き締めへ

2009年以降の株高は、米連銀の未曾有の量的緩和による資金供給、カネ余りが支えてきた。量的緩和を行ったのは、米中英欧日など、主要国のすべての中央銀行だ。

それにより、日欧主要国の国債はマイナス利回りまで買われ、ほとんどの株式市場は史上最高値を更新し続けてきた。カネ余り相場では、売るとさらにキャッシュが増えるので、いずれまた買われることになるのだ。

主要国のなかで、米連銀は年内にもバランスシートの正常化、つまり、資金の段階的な引き上げを画策している。

中国は元を対ドルで大きく変動させたくないところから、基本的な金融政策は米国追随だ。また、ECBも近い将来の金融政策の転換を示唆した。BOEは次回の会合で利上げが話し合われるとした。

主要国の多くが金融引き締めに転じると、今までのような一辺倒の上げ相場は期待し難くなってくる。資金が金融商品間、各国間を回るようになるからだ。

いったんは米国債売りが進む

株高、債券高を支えてきたカネ余りがなくなると、分散投資の基本通り、景気拡大+インフレでは、株買い債券売りとなり、その逆、景気後退+ディスインフレでは株売り債券買いとなる。そして、海外との資金の移動がより活発になる。限られた資金をより有効に運用しようとするからだ。

資金吸収の先陣を切るのは米国だ。それは、これまで償還分を買い続けてきたことを止める形を取るので、債券の売り圧力となる。

日欧は資金供給(債券買い)を続けるので、債券市場の大崩れはない。つまり、世界の債券市場では、いったん米国債売りが進む可能性が出てくる。これは長期金利の急上昇ともなり、米経済にはマイナス要因となる。

米利上げの継続は「日本株高」につながる

一方で、米の金利上昇利回りアップは、米国の利付き商品の魅力を高める。特に、マイナス金利政策を採る日本やユーロ圏では、国内の運用先に乏しいので、米債を買い下がる可能性が出てくる。それが、米国の債券市場を下支えする。そうなると、米国の資金不足は、日欧の資金により埋められることになる。

つまり、米国は自国の金融正常化を、日欧の資金により円滑に進めることができる。バランスシートを縮小させながら、利上げも継続できるのだ。

日本株は当局と年金の買いによって、下値は堅い上値は海外投資家の動向によるが、それはドル円相場の影響を強く受ける。ドル円相場は日米金利差に反応する。つまり、米の利上げ継続は、日本株高につながる可能性が高い。

Next: カネ余りが生んだ「格差」が、その正常化によりさらに深刻化する?

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