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次の暴落の原因。中国が抱える「5000億ドル債務爆弾」はいつ炸裂するか?=斎藤満

中国で発行されたドル建て債務が5000億ドルを突破。これが中国には爆弾となる可能性があり、ひいてはFRBの金融政策や日本市場にも影響を及ぼす可能性があります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年7月26日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

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中国発行のドル建て債務、5000億ドルを突破

国際決済銀行(BIS)によると、中国で発行されたドル建て債務は、足元で5000億ドルを超えました。人民元建ての債務がGDPの3倍もあるとされるのに比べると小さな数字に見えますが、これが中国には「爆弾」となる可能性があり、ひいてはFRBの今後の金融政策にも影響を及ぼす可能性があります。

5000億ドル強のドル建て債務というと、2008年~2009年の危機時の20倍、2015年9月の1.5倍となります。2015年9月と言えば、米国でFRBが利上げに出ると見られていたのが、12月に先送りされた時期ですが、FRBが利上げを先送りした原因として、中国の金融市場の不安定があげられていました。

つまり、中国が3000億ドルを優に超えるドル建て債務を抱える中でFRBが利上げに出れば、ドル金利の上昇とドル高が中国には大きな借り換えコストの負担となり、経済金融を混乱に陥れる、との不安がありました。実際、その夏には人民元、中国株の急落が世界に不安の波紋を広げていました。

トランプとの「密約」頼みの中国経済

今日の中国市場は、為替も株式市場も政府の強力なコントロールの下で安定を見せ、そのおかげでFRBも利上げを継続し、資産の縮小にも踏み切ろうとしています。しかし、中国でのドル建て債務は、15年秋よりも5割も多くなり、新興国で発行されたドル建て債務の3分の1を占めています。しかも、中国ではそのうち1000億ドル余が年内に償還を迎えます。

市場が不安定になれば、この5000億ドル強のドル建て債務は大きな爆弾となりうるのですが、中国政府はこのところ人民元を押し上げ、1ドル6.7元台に誘導しています。一頃は1ドル7元を脅かすほど、人民元不安が高じていましたが、国内金利を高めに誘導し、資本規制を強化することで人民元の先安観はかなり後退しました。

そして最大の不安定要素であった米国政府が、トランプ大統領の下で少なくとも秋の共産党大会までは習近平主席の立場が悪くならないよう、市場の混乱回避、政治的な対立回避に回っています。この中国支援の下、中国金融市場も安定を維持し、この間にFRBは利上げを進めることができました。

このシナリオであれば、秋の共産党大会までは市場も安定が続きますが、共産党大会が習近平体制の強化で終わると、そのあとは米中冷戦の開始となり、米中関係が再び悪化すると考えられていました。従って、共産党大会が終わる前の安定期に、ドル建て債務の償還が進めば、大きな混乱は避けられます。

Next: 米中関係の悪化が招く日本株の大幅調整。想定される2つのシナリオ

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