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個人情報流出に揺れる「Facebook」は買いなのか? 今後の成長余地を見通す=栫井駿介

Facebook(FB)が揺れています。コンサルティング会社に提供したユーザー情報8,700万人分が不正に使用され、2016年米大統領戦でトランプ大統領陣営が利用していたということです。プライバシーに関する懸念が高まり、「Facebook削除運動」にまで発展しています。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

最近の急激な伸びはラッキー?このまま成長が続くなら割安だが…

20億人が使うサービスだけに、影響は大きい

一部報道では、最大2兆ドル(212兆円)の罰金が課される可能性も取り沙汰されています。地合いの悪さも手伝って、株価は問題発覚前から約15%下落しています(4月6日現在)。

FACEBOOK INC A<FB> 日足(SBI証券提供)

FACEBOOK INC A<FB> 日足(SBI証券提供)

Facebookの事業内容を改めて説明する必要はないでしょう。同名のSNSを展開し、流行りのインスタグラムも買収により手中にしています。収益源は、SNS上に表示される広告が全体の98%を占めます。

ユーザーは無料でSNSを利用できます。ただし、多くのSNSと異なり、実名登録が原則となっています。アカウントも基本的に1人1つです。そのため、書かれているプロフィールはより確かなものであると考えられます。

この特徴が悪用されたのが今回の事件です。コンサルティング会社は入手した情報をもとに、ユーザーに対してトランプ陣営が有利になる情報(相手陣営のネガティブキャンペーンなど)を流しました。トランプ大統領の当選は僅差だったことから、これが選挙結果を左右した可能性は否定できません

今回の問題で悪いのは情報を横流ししたコンサルティング会社です。目的外利用であり、契約上禁止されていました。Facebookからの情報提供は適切に行われており、情報管理に問題があったわけではありません。しかし、対策が不十分であった点は否めないでしょう。

ユーザーも企業も、Facebookを手放すのは難しい

「Facebook削除運動」にまで発展しているようですが、実際に削除できる人は少数派でしょう。なぜなら、いまや多くの人がFacebook上で連絡を取り合っているため、削除したら連絡を取れなくなる相手がいて困ってしまうからです。

また、Facebookに直接的に収益をもたらしているのはユーザーではなく、企業などの広告主です。

一時的にはコンプライアンスに気を使って広告出稿を手控える企業も出てくると考えられますが、広告効果がある限りやがて戻ってくるでしょう。Facebookの広告はテレビと違いターゲットを明確に絞れるため、広告効果が高いと見られています。

政府も個人情報流出を受けて何らかの手を打つかもしれませんが、収益に与える影響は限定的でしょう。ユーザーは無料で使っているだけなので、そこに載せる個人情報は自己責任です。個人を特定しないターゲティング広告なら、政府が何と言おうと使いたい広告主はごまんといるでしょう。

なお、冒頭で紹介した2兆ドルの罰金はさすがに無理筋だと思います。対策が不十分だったとしても悪質性が低く、それで会社が潰れてしまうようであれば社会不安を招きます。もし罰金が課されるとしても、現実的な範囲で収まると考えています。

アメリカはこのような個人情報流出に過敏に反応する傾向がある気がしますが、いずれも一過性のものです。同じような問題が出続けるのはSNSを運営している以上宿命と考えられますが、それらを切り抜けながら今後も人々の生活の一端を担い続けると思います。

Next: 最近の急激な伸びは「ラッキー」が重なった結果か。今後も成長は続く?

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