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「法人税20%台」だからどうした!やはりアベノミクスは大企業優遇=柴山政行

現在32.11%前後の法人税を20%台まで引き下げる動きがあります。これに関して公認会計士の柴山政行さんは、「減税されるということは、支出を抑えない限りどこかで増税があるということ」と指摘。そのしわ寄せは中小企業と庶民を直撃する可能性が高いと見ています。

安倍政権「法人税等を2016年度に20%台に」だからどうした!

「法人税が下がる」の甘い言葉にダマされるな

11月27日の日本経済新聞1面によると、首相官邸が、企業の所得(税金計算上の利益)にかかる法人税等の実質的な税金負担率を現在の32.11%前後から20%台に引き下げるよう財務・経済産業両省に指示したと報じられました。

少し前まで、日本とアメリカが税負担率40%程度ということで、一時期、他の海外諸国に比べ、高い法人税等の負担率で国際競争力の点で不利ではないか、と言われていたのですね。

私は10年くらい前からさんざん言っていたので、何をいまさら感がありますが(すでに時期を逸しているという意味です)、これは消費増税とセットであろうと私は思っています。

財源探しという言葉がある通り、ある税目の税収が減れば、他の収入源を増やして調整するか歳出を減らすかしなければ、収支が悪化しますから。

で、いまのところ(というか、これまでもこれからも)政府は支出を抑える素振りすら見せないため、増える支出で減る法人税等に対する手当をどこかでしなければなりませんね。

問題はその財源の探し方ですが、下記だそうです。

  1. 設備投資減税の縮小
  2. 赤字企業への課税強化
  3. 消費増税

ここで、3.消費増税を見逃してはいけません。つまり、現時点での首相の判断は、「法人税率引き下げ」>「設備投資、赤字企業、消費者」と結論づけているのですね。

ちなみに、平成26年度における申告所得の赤字企業比率は69.4%と、依然として7割の高水準です。(出典:平成26事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要[PDF] – 国税庁)

つまり、「日本企業の10社中7社が、いまだに赤字申告」という状況の中、以下を行う判断です。

  • 法人税等の税率引き下げ
  • 赤字企業の課税強化

いかがですか?おそらく3割の黒字申告には相当数の上場企業等が含まれていることでしょう。

支出を抑えず減税=大企業優遇でしわ寄せは中小企業と庶民へ

何が言いたいか?

見方を変えれば、やっぱり経団連等の大企業様優遇?赤字の中小企業を直撃?さらに消費増税で、利益が出ていない赤字中小企業のカネを剥ぎ取る?という考え方が出てもおかしくないわけです。

法人税率が下がれば全ての企業が平等に減税」というイメージを抱かせる、ちょっと危険な報道のしかたです。

誰が黒字で、誰が赤字で、その割合がどれくらいで、減税で誰が得をして、他の増税で誰が損するかまで踏み込んで考える必要がありそうです。

なお、同じく11月27日の日本経済新聞の3面には、官民対話で経済界が設備投資と賃金を増やす姿勢を明らかにしましたが、これらへの政府介入も違和感が残るものでした。

そもそも、設備投資増という経済界の見込みに根拠は乏しいですし、言ってみただけ?みたいな印象を拭えません。

逆に見ると、そうやって経団連等が希望的な発言をすることで、政府の法人減税との取引を行っているような印象も受け、「経済の裾野を支える中小企業の頭越しにな~んかごちゃごちゃやっていて実効性あるのかいな」といった議論にも見えます。

アベノミクスの恩恵は、真っ先に上場企業が受け、私ども中小に下りてくるのはずっと後、ないしは効果が希薄した状態のような感じですよね。

当初は勢いのあったアベノミクスも、ちょっとここに来て焦りの色が見える気がします。

はっきり申し上げますと、法人税率がちょこっと下がったくらいで、赤字申告法人が多い中小にはたいして効果がない。むしろ赤字法人への課税強化や、もっと言うと消費増税のほうが、資金繰り圧迫の影響が重いのですよ。

今まさに「大企業に甘く、中小企業(と庶民)に厳しい」税制へと政府が動いているように見えます。中小企業をないがしろにした議論ばかりしていると、後でしっぺ返しを食うことになるのは政府だと思うのですがいかがでしょうか。

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時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2015年11月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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