次は、資産653兆円(14.03.31時点)を換金性で評価する
現金・預金 | 19兆円(換金性あり) |
有価証券 | 129兆円(外貨準備:換金性あり) |
貸付金 | 138兆円(独立行政法人等:若干の換金性) |
運用預託金 | 105兆円(年金基金の運用:換金性あり) |
出資金 | 66兆円(独立行政法人等:換金性あり) |
有形固定資産 | 178兆円(換金性はほとんどない) |
その他資産 | 17兆円(換金性あり) |
政府管理の資産計 | 653兆円 |
換金性資産 | 475兆円(固定資産を除いた換金性の資産) |
換金性負債 | 1143兆円(ほぼ全部の負債が換金性あり) |
債務超過 | 668兆円(換金性で見た債務超過額) |
政府や公団が管理している有形固定資産は、河川工事、道路、橋、トンネルが多く、ほとんどのものに換金性がありません。
河川工事に公共事業費が使われていても、その利根川や信濃川を買って事業に使う企業はない。道路や山林も同じで、有料化して民営にするのは無理です。省庁の建物や公共施設も同じでしょう。
以上から、いざというとき換金できる政府の資産は、475兆円です。満期には払う必要がある負債は1143兆円です。ここから、換金性の観点での政府の債務超過は、668兆円と見積もられます。
(注)財務省が作ったB/Sの債務超過は490兆円(14.03.31)とされています。ここでの計算では、換金性ない有形固定資産の分(178兆円)が膨らんで、債務超過は668兆円です。GDP(500兆円)分の1.33倍です。
GDPの1.33年分の債務超過668兆円と言っても、それが将来の財政破産という観点で意味を持つものではありません。肝心なことは、この純債務が今後大きく膨らむのか、減少するのか、です。
2009年から2013年度までのこの純債務の増加は124兆円(1019兆円→1143兆円)です。年間の純債務の増加は、年平均で31兆円です。
【分岐点】
(1)財政破産が起こらないとき
純債務の増加年31兆円が、25兆円、20兆円、15兆円、10兆円……年5兆円(GDPの1%程度)と減って行くか、それ以上の傾向で減って行くと認識されれば、国債の金利高騰からの財政破産は起こらないでしょう。
現在の債務超過の金額は、国債を買う金融市場に受け入れられた結果です。その金額が多いかどうか。世界一多くても、国債の金利高騰がなく、乗り越えられています。
問題になるのは過去ではない。将来の純債務の増え方です。
(2)財政破産になるとき
年間純債務31兆円が同じか、5兆円ずつ増えるというように金融市場で認識されると、国債リスクの観点から、国債の金利が上がって行き、いずれ国債の金利高騰が起こる時が来て、財政破産します。
この時期はいつか? 次に述べる将来のインフレ率と関係します。インフレ率は、人々が債券に要求する期待金利を上げるからです。
(※注)結論を言うと、2018年ころからは危なくなるでしょう
【注記事項】
・普通の時期の国債の理論金利=実質GDPの期待成長率+期待インフレ率
・財政危機が認識されたときの国債の理論金利=実質GDPの期待成長率+期待インフレ率+リスク率
リスク率は、回収を保証する保険(CDS)の料率に相当するものです。2010年のギリシア危機のとき、ギリシア債にかかったCDSは最大70%、スペイン債では7%、ポルトガル債7%、イタリア債7%に高騰しました。2015年12月現在、ギリシア債のCDSは10.8%くらいです。