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高橋洋一氏「日本の借金1000兆円はやっぱりウソでした」論は本当か?=吉田繁治

4.日銀が、保有国債を100兆円金融機関に売ったときのB/S

借方(資産) 貸方(負債)
当座預金減少 100兆円 国債売却 100兆円

日銀が買ってきた国債を金融機関に100兆円売って、金融機関が所有する当座預金から100兆円のマネーを吸収する取引です。

これは、マネタリーベースを減らすマネー量の引き締めになります。このため利上げをしたかのように、金利が上がります。国債の流通価格は下がります。金利を下げて、国債価格を上げてきた量的緩和の逆です。

【金融機関がもつ国債が減っていた時】
日銀が異次元緩和で1年に80兆円も金融機関から国債を買いあげているときは、政府の新規国債の発行は35兆円/年くらいなので、金融機関がもつ国債は、日銀が買いあげた分減ったように見えていました。金融機関の保有国債は、1年に45兆円の割合で減っていたからです。

以上が、T氏が「日銀が国債を買いあげると、政府の国債発行は、日銀と連結した『統合政府』で見れば減ったようになる」と言っていることの正体です。
(※注)実際には、政府の国債発行は減っていません。政府部門と見ることができる日銀の保有が増えて、金融機関の保有が減っていただけです

【金融機関がもつ国債が再び増えるとき】
物価が上がり、期待金利が上がってくると、日銀は、出口政策をとらねばならなくなります。出口政策をとらないと、インフレが昂進し、ますます市場の期待金利は上がり、円も下落し、国債の流通価格が下落するからです。

出口政策とは、上記の振替伝票(日銀が国債を売るときのB/S)で示したように、日銀が金融機関から買いあげてきた国債を売って、当座預金を減らすことになります。

このとき、日銀が金融機関に国債を売った分、金融機関の保有国債は増えます。国債という政府負債は、日銀の増加保有で減っていたわけではなかった。

日銀が売らねばならなくなったときは、金融機関の保有になって、減っていた分がまた増えるのです。日銀の、この保有国債の売りとともに、期待金利は一層上がり、国債の流通価格は大きく下がるでしょう。
(※注)これが財政破産の引き金を引くことにもなります

T氏が言う、「日銀が国債を買いあげれば、国債は減る」ということは、正確には「日銀が国債を買いあげれば、日銀以外がもつ国債は減る」ということです。

日銀による、低い金利の国債を高い価格での買いあげることが増えるから、金融機関の国債保有が減るのです。政府の発行国債が、実際に減っていたわけではありません。

T氏は、日銀が出口政策では、国債を売らねばならないことを無視して、「日銀が国債を買い上げれば、国債は減る」という偽説を言っています。T氏から偽説を言われて、反論できないエコニミストは、情けなく思えますね。

5.宿題:インフレ目標を達成しても、日銀が出口政策をとらないとどうどうなるか

■質問

日銀が、国債を売る「出口政策」をとると、金利が上がって国債価格が下がるなら、「永久に」日銀が国債を買い続ける異次元緩和を続ければいいのではないでしょうか。日銀が政府の国債の全部を買いあげると、どうなるのでしょう。

■答え

この答えは、あなたも考えてみてください。一旦、ここで送ります。次号を送るまえに、どんな答えが準備されているでしょうか。

【関連】誰が売って誰が買うのか?2016年日本株「下落と上昇の要素」6つ=吉田繁治

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