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日経平均3万円回復はバブルの序章。近づく4万円到達と「億り人量産」、超インフレに傾く日本で何が起こるか?=矢口新

米市場はバブルの真っ只中:レディットの「煽り」で乱高下

コロナ対策で、日本の当局は膨大な資金供給を行ったが、それにも増して大量の資金を供給したのは米政府と米連銀といった米当局だった。その結果として、個人にも十分な資金が行き渡ることになった。

参照図02:米個人所得の推移

参照図02:米個人所得の推移

図02の水色の部分をご覧いただきたい。2020年の第1四半期から第2四半期にかけて、給与所得が急減する。これはコロナ対策で事業活動が止められたために、失業や一時帰休が所得減に繋がったためだ。しかし、その上の青色の膨らんだところが、政府の支援金だ。この膨大な支援金により、結果的に働いているよりもはるかに多くの所得を得たことが見て取れる。

米国は全州でロックダウン(都市封鎖)を行い、住民のほぼ全員が自宅待機を強いられた。やることはないが、資金はある状態が続き、それが「すごもり消費」に結びついた。そこにスマホ取引に特化した「ロビンフッド」などのオンライン証券会社などが台頭し、株式投資も盛り上がることになったのだ。

参照図03:2020年2月から2021年2月の間に投資を始めた人の割合

参照図03:2020年2月から2021年2月の間に投資を始めた人の割合

日本人よりも米国人の方が、株式投資に熱心だという印象があるが、必ずしもそうではない。全体としては米国人の方が株式の保有比率が高くても、それは概ね長期保有だ。先物市場こそ活発だが、投機的売買に関しては、日本人は決して引けをとらない。また、トレーディングでは米国人も参考にするローソク足や酒田五法は日本オリジナルなもので、投機的売買に役立つものだ。

ましてや、米国の若い世代は日本の若者以上に奨学金ローンの支払いに苦しんでおり、株式の長期保有などという余裕は限られていた。そうした若者たちが時間と資金を手にした効果が、図03に表れている。ここで時間と資金と、並列に並べて述べたが、時間はどれだけ長引くかは不明である一方で、資金は一時的なものに過ぎないことが分かっていた。資金は使い果たせばなくなるが、その後の収入の当てはいつになれば確実になるかは不明だった。何とか資金を増やしたいという欲求は切実なものだった可能性がある。

トレーディングの初心者が頼るのは経験者だが、米国にはトレーディングの経験者は多くない。また、スマホ証券は手数料無料で簡単にはトレードできるが、それだけだ。それで口コミSNS「レディット」に頼る初心者たちが急増した。

ヤフーファイナンスとハリスポールの調査では、2021年1月にレディットの「煽り」で、米国人の9%がゲームストップ(GME)、10%がAMCエンタテインメント(AMC)、6%がブラックベリー(BB)、5%がノキア(NOK)、4%がキャスターマリタイム(CTRM)、他に10銘柄を超える「ちょうちん買い」を行ったという。合わせて28%もの米国人が、レディットを頼りに売買したのだ。

※参考:28% of Americans bought GameStop or other viral stocks in January: Harris Poll-Yahoo Finance survey(2021年2月10日配信)

これが誇張だとは言えないのは、下図04の取引量を見れば分かる。うちゲームストップに至っては、2020年12月末にヘッジファンドの空売りが浮動株の140%にも達していたとされ、レディットの煽り、ロビンフッド経由で個人投資家の買いが殺到、ヘッジファンドを大損させたことが話題となった。100%以上空売りできるのかと聞かれれば、OTCのデリバティブを通せば可能性としてはあり得る。OTCは投資家と業者の相対取引なので、うっかりしていると100%以上になることも考えられるからだ。

個人投資家のゲームストップ買いのピークは1月25日と26日で、25日はS&P500株指数採用のどの銘柄よりも取引量が大きかった。26日は2番目だった。

参照図04:1月25日の週のゲームストップの取引量対S&P500

参照図04:1月25日の週のゲームストップの取引量対S&P500

下図05が「ことの顛末」チャートだ。「参照図01:タペストリー・プライスアクション理論」で解説したように、売り手は買戻し前提、買い手は売り戻しが前提の、参加者のほぼ全員が投機的売買だったことが分かる。

参照図05:ゲームストップの株価(30分足)

参照図05:ゲームストップの株価(30分足)

ゲームストップ株が上げている時、短期間に巨利を得たというカリスマ個人投資家が買い推奨し、「空売りは必ず買い戻す。絶対に売るな」と煽ったと、ウォールストリート・ジャーナルが取り上げた。同記事には「カリスマ氏は私の人生の恩人だ」と感謝している人の談話も載せていたが、2、3日後にはどうなったのだろうか? 相場は難しい。ゲームストップ株を売らずに持ったままだと大損したことが分かる。カリスマ氏は資産か信用の、少なくともどちらか1つを失ったことを示唆している。

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