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日経平均3万円回復はバブルの序章。近づく4万円到達と「億り人量産」、超インフレに傾く日本で何が起こるか?=矢口新

「SPAC」がビリオネアを量産する

こうしたゲームストップなどの狂乱は、バブルの一環だと言える。テスラや仮想通貨もバブルだと言えるが、米国ではもう1つのバブルがビリオネアを量産し始めている。SPAC(特別買収目的会社)という、会社型投資信託だ。

SPACは「ブランクチェック(金額未記入の手形)」に例えられるように、ファンドマネージャーの「目利き」だけを信頼して大量の資金を提供するものだ。SPACは目ぼしいベンチャー企業を探し出して、IPOにまで漕ぎ着ける。SPACは株式保有で利益を得、ベンチャー企業は比較的簡単にIPOを果たすことができる。

SPACは1970年代に発案されたと言うが、投資家保護の観点から違法とされたという。1990年代に復活したが、やはり同様の理由で許可されなかった。

それが2009年頃から復活したのが興味深い。この時期には、ボルカー・ルールで「銀行が顧客の預金で自己投資すること」が禁じられたからだ。預金者は銀行が自己の投資で最悪破綻することの準備ができていない。投資したいのならば、出資者が納得づくのファンドをつくれとなったからだ。その点、SPACでは出資者が納得づくで「ブランクチェック」をファンドマネージャーに渡している。

参照図06:SPACを通じたIPOの件数、平均調達額、総額の推移

参照図06:SPACを通じたIPOの件数、平均調達額、総額の推移

図06が示しているのは、SPACを通したIPOが2020年に急増したことだ。これは当局のコロナ対策がバブルを誘発したことを示唆している。また、2021年は最初の5週間ほどだけで、IPO件数が前年の48%にも達している。

そして今現在も、巨額の資金を背景に多くのSPACがベンチャー企業を上場させようと狙っている。現在、ビリオネアへの最短コースとなっているのがSPACだ。

米国はバイデン政権になっても支援の手を緩める気配はない。そうした資金力を背景に、ゲームストップや仮想通貨、ベンチャー企業のようなバブルのターゲットを見つけては局地バブルを展開する一方で、主要指数も少なくともしばらくは堅調で推移しそうだ。

日本の行く末はどうなる?

このように大盤振る舞いに見える米国に対して、菅政権のコロナ対策は何とも中途半端に思われないだろうか?

これも私は予想していた。何故なら、もともと支援する原資などないところに、膨大な支援を必要とする政策を採用した「事情」があるからだ。

米国のGDP比で見る公的債務は100%を優に超えてきているが、日本はその2倍以上で世界一の債務政府だ。資産と相殺した純債務でも調査国中一番で、その政府資産として見なされているものは国民の年金資産だという有り様だ。日本が純債権国だから安心だというのは、民間には資産があるので、有事には国のものになると言っているに等しい。だからこそ、日本から離れる富裕層が多いのだ。

それでも政府は国民の信用力を背景に、大量の資金を供給しているのだが、中途半端になるのも止むを得ない。日本の財政は危機的なのだ。そして、そのツケはいずれ国民が支払うことになる。

私は日本の社会保障制度の継続に強い危機感を持ち、図表65枚からなる解説書を書いているが、ここでは1枚の図表だけを使って、その危機感を読者の方々と共有したい。

参照図07:社会保障関係費の推移(出所:厚生労働省の資料から作成)

参照図07:社会保障関係費の推移(出所:厚生労働省の資料から作成)

1990年度の国が負担する社会保障関係費は11.6兆円だった。それが2018年度には33.0兆円になる。一方、税収は1990年度が60.1兆円、2018年度が60.4兆円で、これが日本税収のダブルトップだ。

このことは、税収に占める社会保障関係支出が1990年度の19.3%から、2018年度は54.6%に急上昇したことを意味している。何と、税収の半分以上を国が負担する社会保障費で持っていかれているのだ。しかも、それでも足りずに借金している。

そして、今後も社会保障関係支出が増え続ける見込みなのに対し、税収はまず2019年10月の消費増税で減少し、コロナ禍とコロナ対策禍で、さらに急減する見通しだ。

Next: 消費税導入で税収減少。日本の財政危機は株価に何をもたらすか?

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